◆短くわかる民事裁判◆
判決書の読み方:勝訴・敗訴の判断
判決が原告の全面勝訴であるかは、まず第1に、原告が訴状に記載した(提訴後に訴状訂正の申立とか訴え変更の申立をしていれば、その後のもの)「請求の趣旨」と主文が同じであれば、原告の全面勝訴と判断できます。判決書上は、判決理由の冒頭にある「請求」欄が(これが、原告が判決時点で求めている請求の趣旨ですから)「主文と同旨」「主文と同じ」と書かれていれば、原告の全面勝訴です。
判決主文では、判決主文に「原告のその余の請求を棄却する」という文がなければ通常は原告の全面勝訴を意味します(請求の一部が「却下」されている場合は、その部分は敗訴しているので、違いますが)。主文に「原告のその余の請求を棄却する」という文ある場合は、「その余の部分」が敗訴なので、一部勝訴です。
また原告全部勝訴の場合は、普通は、「訴訟費用は被告の負担とする」とされています。
なお、被告の全部勝訴(原告の全面敗訴)の場合の主文は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」となるのがふつうです。
法的なあるいは理論的な意味で「全部勝訴」かは、このように判断しますが、当事者にとってはその裁判で何が大事かはそこで決まらないということもあります。弁護士の目からは、例えば国家賠償請求などは、ほんの一部でも認められたら実質は勝訴でしょうし、ハラスメントの事件など、たくさんの事実を主張して大部分は事実が認められない、認められた事実も大半はハラスメントというに足りないとか違法とは言えないとして、ごく一部の事実だけが不法行為(違法なハラスメント)と認められるということが多く、それでも認められたら勝利でしょうという感覚を持ちます。主張の一部でも認められなかったら実質敗訴だとか不当判決だとかいう当事者もいますけど。また、結論として請求が認められない場合(法的には敗訴)でも、この事実が認められたとか、判決理由中で実質的に自分の正しさや心情が認められたことで満足する場合もあれば、逆に請求が認められても(法的には勝訴)判決の事実認定で自分の主張が(一部)通らなかったとか理由が気に入らないと不満を述べる当事者もいます。そのあたりは、当事者の気持ちの問題もあり、いろいろだなと思います。
判決については、モバイル新館の 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
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