◆短くわかる民事裁判◆
判決言い渡し裁判所の構成の違反
民事訴訟法第312条第2項第1号の絶対的上告理由「法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと」は、判決の内容を決定し判決書原本に署名押印した裁判所(裁判官)が法律に従って構成されていないということで、判決を言い渡した裁判所が法律に従って構成されていなくても、絶対的上告理由にはなりません。
もちろん、判決を言い渡した裁判所が法律に従って構成されていなかった場合、訴訟手続の法令違反となり、それが判決に影響を及ぼすことが明らかであれば原判決を破棄する理由となります(高等裁判所が上告裁判所の場合民事訴訟法第325条第1項、最高裁判所が上告裁判所である場合民事訴訟法第325条第2項)が、裁判所はそこは区別して判示しています。
最高裁1972年11月2日第一小法廷判決は、判決言渡期日の口頭弁論調書に裁判官の名前が2人しか記載されていないことから、判決言渡が3名の合議体によってなされなかったこととなり、判決言渡をした裁判所が法律に従って構成されていない(裁判所法第18条第2項違反)というケース(上告理由書提出後に、調書の記載を裁判官3名に更正する調書が作成されたけれどもその効力は認められない)について、絶対的上告理由の条項ではなく、現在の民事訴訟法第306条(第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。)に当たる条項(旧民事訴訟法第387条)を挙げて原判決を破棄しています。
最高裁1980年9月11日第一小法廷判決は、判決言渡期日の口頭弁論調書に陪席裁判官2名の名前のみが記載され、(裁判長が判決言渡という記載があり、裁判長認め印欄に印影はあるものの)裁判長の氏名が記載されていないから判決言渡に関与した裁判所の構成が明らかでなく、原判決は判決言渡手続に違法があるといわざるを得ず右違法が判決に影響を及ぼすことが明らかとして、原判決を破棄し原裁判所に差し戻しました。
上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
モバイル新館の「最高裁への上告(民事裁判)」、
「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。
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