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短くわかる民事裁判◆
最高裁への上告と高裁への上告
 高等裁判所が第2審としてした判決(第1審が地方裁判所)に対する上告は最高裁に行い、地方裁判所が第2審としてした判決(第1審が簡易裁判所)に対する上告は高等裁判所に行います(民事訴訟法第311条第1項)。

 最高裁への上告と高裁への上告は、最高裁への上告は上告と上告受理申立てという2つの制度がある(高裁への上告では上告受理申立てという制度はない)という点で異なっていますが、それに応じて高裁への上告の上告理由に、最高裁への上告の上告理由に加えて「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」ことも含まれ、これは上告受理申立て理由の「法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められること」と実質的には同様の機能を持っていますので、上告理由としては大差ないと考えられます。
 手続の面では、上告理由書の副本の提出数が最高裁は被上告人の数+6通、高裁は被上告人の数+4通ということ(民事訴訟規則第195条:これは単純に裁判官の人数の違いです)、不適法却下する場合は別として上告に理由がないとして棄却するとき、最高裁は決定で上告棄却することができる(民事訴訟法第317条第2項)が、高裁は判決で上告棄却しなければならない(民事訴訟法第319条)ので、高裁は必ず事前に判決期日を指定する(最高裁は口頭弁論を開く場合以外まったく事前連絡なく棄却決定を簡易書留で送ってくる)という点が違います。
 あと、これは事実上の慣行ですが、口頭弁論を開く場合(現実的には上告裁判所が原判決を見直す意向の場合、つまり上告人が逆転勝訴の見込みがある場合)に、最高裁の口頭弁論は、本当に口頭で意見陳述をすることになっています(事前に事実上の陳述予定原稿を出せといわれますが)が、高裁での口頭弁論は口頭での意見陳述は想定していなくて控訴審の第1回口頭弁論のイメージでやっているという点が違います(これは両方を経験している弁護士が少ないので、ほとんど書かれていませんけど)。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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