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短くわかる民事裁判◆
絶対的上告理由
 民事訴訟法第312条第2項は、主として手続に関わる重要な違反を上告理由として列挙し、民事訴訟法第325条第1項前段は、「第312条第1項又は第2項に規定する事由があるときは、上告裁判所は、原判決を破棄」しなければならないと定めています。民事訴訟法は、それ以外に原判決を破棄すべき場合としては、「高等裁判所が上告裁判所である場合において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとき」(民事訴訟法第325条第1項後段)、「上告裁判所である最高裁判所は、第312条第1項又は第2項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとき」(民事訴訟法第325条第2項)といずれも「判決に影響を及ぼすことが明らか」であることを求めていますが、憲法の違反(第312条第1項)と並んでこの第312条第2項については、判決に影響を及ぼすことが明らかであることを要件としていません。
 それで、この民事訴訟法第312条第2項に列挙されている事由は、その事由が存在したというだけで判決に影響を及ぼしたことが明らかでなくても原判決を破棄しなければならないという意味で、「絶対的上告理由(ぜったいてきじょうこくりゆう)」と呼ばれています。

 民事訴訟法第312条第2項が列挙する絶対的上告理由は、次のとおりです。

 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(民事訴訟法第312条第2項第1号)。

 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと(民事訴訟法第312条第2項第2号)。

 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと(民事訴訟法第312条第2項第2号の2)。

 専属管轄に関する規定に違反したこと(第6条第1項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)(民事訴訟法第312条第2項第3号)。

 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと(民事訴訟法第312条第2項第4号)。ただし第34条第2項(第59条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない(民事訴訟法第312条第2項柱書但し書き)。

 口頭弁論の公開の規定に違反したこと(民事訴訟法第312条第2項第5号)。

 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること(民事訴訟法第312条第2項第6号)。

 それぞれの絶対的上告理由については、別のページでより詳しく説明します。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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