◆短くわかる民事裁判◆
土地管轄:労働審判と本訴移行
労働者と使用者の間の労働関係をめぐる紛争を裁判官1人と労働者団体・使用者団体から推薦された審判員各1名の3名で構成される労働審判委員会(ろうどうしんぱんいいんかい)が原則として3回までの期日で解決を図る労働審判(ろうどうしんぱん)という手続があります。
労働審判は、相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所、労働者が現に就業しているか最後に就業していた使用者(事業主)の事業所の所在地を管轄する地方裁判所または当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とされています(労働審判法第2条)。
労働審判は、東京地裁立川支部、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部、福岡地裁小倉支部の5つの支部以外は、支部では行われておらず、これらの支部以外の事件はすべて本庁で行われます。
労働審判では、提出された書面(主張書面:しゅちょうしょめん)と書証(しょしょう)、期日でのやりとりで得た心証に応じて労働審判委員会が調停案(ちょうていあん)を示すなどして、双方が合意して調停ができた場合は調停調書を作成して終わり、調停ができないときは、労働審判委員会が審判を行います。そして、審判に不服がある当事者は(審判の告知を受けたときから2週間以内に)異議(いぎ)を申し立てることができ、異議申立があると審判は効力を失い、自動的に本訴に移行します。
本訴に移行した場合、その本訴については、労働審判をした裁判所に管轄があるものと定められています(労働審判法第22条)。
その結果、労働審判を申し立てて、本訴に移行する場合、労働者は確実に就労場所の所在地の地裁(5箇所の例外を除いて本庁)に訴えを提起して審理を受けることになります。就労場所の所在地の地裁に管轄があるか不明瞭な場合や支部での審理を避けたい場合、労働審判の申立を経ることでその問題を回避するということもできます。管轄のために労働審判申立を経るというのは面倒ではありますが…
管轄についてはモバイル新館の 「どの裁判所に訴えるか」でも説明しています。
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