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短くわかる民事裁判◆
許可抗告の実情
 許可抗告(抗告許可申立て)は、不服申立ての対象となる原決定をした裁判官たちが許可するか否かを判断するというしくみですから、基本的には、許可が出ることは期待できないと考えられます。

 司法統計年報で過去10年の各年の決定の実績を拾うと次のようになります。

年   既済件数   許可件数   許可割合(%) 
 2023   1,810       14       0.77 
 2022   1,561       23        1.47 
 2021   1,549       18        1.16 
 2020   1,400      25        1.79 
 2019   1,642      17        1.04 
 2018   1,690      16        0.95 
 2017   2,150      27        1.26 
 2016   1,479      32        2.16 
 2015   1,354      38        2.81 
 2014   1,595      32        2.01 

 さらに、最高裁での結論の実績は次のようになっています。最高裁の既済件数は、最高裁に誤って申し立てられた抗告許可申立てを受け付けた上で高裁に移送したという処理が含まれています(2020年にはそれが19件もあったということです)ので、移送件数を差し引いた数字で作表しました。

年   既済件数   原決定破棄   破棄割合(%) 
 2023       20        10         47.6
 2022       16         3         18.8
 2021       32         8         25.0
 2020       23         5         21.7
 2019       18         4         22.2
 2018       11         0          0.0
 2017       52         7         13.5
 2016       38        18         47.4
 2015       37         7         18.9
 2014       40         4         10.0

 年によってばらつきがありますが、10年計で見ると、申立てが許可されるのが(最高裁にたどり着けるのが)約1.5%、その許可された抗告が最高裁で認められるのが約23%ですから、結局、申立てに対する最終的な認容(原決定破棄)率は大雑把に見て0.35%となります。そうすると、判決に対する上告受理申立てよりも厳しいということになります。

 許可抗告については、判例雑誌の「判例時報」に、年1回くらい、最高裁調査官が抗告許可がなされた事案と法的な論点、それに対する最高裁の判断を紹介した「許可抗告事件の実情」という記事が掲載されています。そこでは調査官が抗告が許可された事件の中には制度の趣旨に沿わない運用も相当数見られる、抗告の許可の当否につき検討の余地があるといわざるを得ないという指摘(苦言)を繰り返し書いています。最高裁側からすると、これでも許可が緩すぎるというのです。実際最高裁は、高裁が許可した事件のうち4分の1くらいしか認めないわけですから、そう考えているのでしょうけれど。
 

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