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短くわかる民事裁判◆
最高裁に抗告許可申立てをした場合
 高等裁判所の決定・命令に対する抗告許可の申立ては、原決定・命令を行った高等裁判所に対して申し立てることとされています(民事訴訟法第337条第1項)。
 この申立てを最高裁に行った場合、最高裁はどうするでしょうか。
 抗告許可の申立ては、原決定の告知を受けた日から5日以内に行わなければなりません(民事訴訟法第337条第6項、第336条第2項)から、最初の申立てが却下された場合に再度の申立てができるということはほぼないので、現実的には、移送の扱いがされない限り、申立て内容について判断を受けることはできません。

 抗告許可の制度ができる前の判断では、原裁判所に提出すべき抗告状等を最高裁に提出した場合、最高裁は原裁判所に移送する扱いをしていました(最高裁1955年6月22日第二小法廷決定等)。
 決定自体の掲載はありませんが、2020年には、最高裁に直接抗告許可の申立てがあり高裁への移送決定がなされたものが19件もあったことが、最高裁調査官による「許可抗告事件の実情」で述べられています(判例時報2492号104ページ)。
 それらのことからすると、法律上原裁判所(高裁)に申し立てるべき抗告許可申立てを、最高裁に対して行った場合、最高裁は高裁に移送する扱いをしているようです。

 しかし、いつもそうすると決まっているわけではありません。
 最高裁への抗告許可申立てを繰り返し行っていた弁護士が最高裁に抗告許可を申立て、その抗告許可申立書に特定の裁判所への移送を希望すると記載されていた事案で、最高裁2026年1月28日第一小法廷決定は、「抗告許可の申立てをする者(以下、単に「申立てをする者」という。)が、単に最高裁判所に抗告許可申立書を提出したというにとどまらず、抗告許可申立書を提出すべき裁判所が原裁判所であることを認識しながら不当な目的をもってあえて最高裁判所に抗告許可申立書を提出した場合には、申立てをする者は、殊更に許可抗告制度を逸脱する意図をもって抗告許可の申立てをすることを選択したものというほかない。このような不当な目的をもってされた抗告許可の申立てを原裁判所に移送することによって当該申立てをする者を法的に保護すべき理由はないというべきである。そして、以上の検討を踏まえると、上記の場合には、当該抗告許可の申立てが不適法であることは明らかであるから、これを原裁判所による上記許可に係る決定を経るために原裁判所に移送することは要しないというべきであり、このように解したとしても許可抗告制度に抵触するものではない。」として、最高裁に直接された抗告許可申立てを移送することなく却下しました。


 管轄についてはモバイル新館のもばいる 「どの裁判所に訴えるか」でも説明しています。

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