◆短くわかる民事裁判◆
控訴事件の第1審裁判所での手続
控訴は、控訴裁判所宛の控訴状を第1審裁判所の事件受付に提出して行い(民事訴訟法第286条第1項)、控訴状の受理により事件は控訴裁判所に移審します。
しかし、訴訟記録が第1審裁判所にあるうちは、さまざまな点で第1審裁判所に対して、また第1審裁判所が行うとされています。
控訴権の放棄は、控訴提起前は第1審裁判所、控訴提起後は訴訟記録が第1審裁判所にあるときは第1審裁判所に対して申述しなければなりません(民事訴訟規則第173条)。
勝訴した原告が仮執行宣言に基づいて強制執行(仮執行)するための執行文の付与(しっこうぶんのふよ)は、訴訟記録が第1審裁判所にあるときは第1審裁判所の書記官が行います(民事執行法第26条第1項)。
敗訴した被告が控訴提起に伴って行う仮執行宣言付き判決の執行停止申立ては、訴訟記録が第1審裁判所にある間は第1審裁判所に対して行われ、その申立てに対する裁判も第1審裁判所(原判決をして裁判所)が行います(民事訴訟法第404条第1項)。
控訴の取り下げは、訴訟記録が第1審裁判所にあるときは、第1審裁判所にしなければなりません(民事訴訟規則第177条)。
訴訟記録の閲覧・謄写も、訴訟記録が第1審裁判所にある間は、第1審裁判所の書記官に対して請求し、第1審裁判所が対応することになります。
控訴に対しては、第1審裁判所は、控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかな場合の却下決定(民事訴訟法第287条)以外には権限がないので、それ以外の、控訴状審査、補正命令(控訴提起手数料、送達費用の納付に関するものを含む)、訴訟救助申立てへの対応、控訴状副本の送達等は、控訴裁判所が行うことになる。
第1審裁判所の書記官は、訴訟記録を整理して、遅滞なく控訴審裁判所の書記官に送付しなければならないとされています(民事訴訟規則第174条)。
この訴訟記録の整理は、記録編成通達に従って(1)第1分類(弁論関係書類):ア調書群(口頭弁論調書、弁論準備手続調書、和解期日調書、期日指定書等)、イ判決書群(判決書、和解調書、訴え取下書等)、ウ訴状群(訴状、答弁書、準備書面等)、(2)第2分類(証拠関係書類):ア目録群(書証目録、証人等目録)、イ証拠説明書群(証拠説明書、証拠に対する意見書)、ウ書証群(甲号証、乙号証等)、エ証拠調べ調書群(証拠調べ調書、宣誓書、鑑定書)、オ嘱託回答書群(調査嘱託、鑑定嘱託の結果)、カ証拠申出書群(証拠申出書、証拠に関する裁判書)、(3)第3分類(その他の書類):ア代理及び資格関係書類、イ秘密記載部分の閲覧等の制限の申立書、ウ秘匿関係書類、エ督促事件記録、オ労働審判事件記録、カ刑事損害賠償命令事件記録、キ強制執行停止事件記録、クその他のように分類・区分して編年体で綴って行うとされています。
私の経験上の体感では、第1審裁判所から控訴裁判所への訴訟記録の送付には控訴後約1か月程度かかっているように思えます(控訴に限らず、裁判所間での訴訟記録の送付がなされるときは概ねそれくらいの感じです)。
※1999年7月実施のアンケートでは高裁が控訴裁判所である場合の第1審裁判所から控訴裁判所への訴訟記録送付日数は控訴状提出から数えて20日から30日以内とされています(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版102ページ)。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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