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短くわかる民事裁判◆
附帯控訴状の必要的記載事項
 附帯控訴については、控訴に関する規定によるとされています(民事訴訟法第293条第3項本文)ので、附帯控訴状の必要的記載事項は、当事者及び法定代理人、第1審判決の表示及びその判決に対して附帯控訴得する旨で(民事訴訟法第286条第2項)、この記載について控訴裁判所の裁判長の審査を受け、不備があれば補正命令を受けることとなります(民事訴訟法第288条)。

 しかし、附帯控訴は、相手方の主たる控訴を前提とするものであり、附帯控訴状の形式及び記載事項は緩やかに解され、原判決の表示を欠いていたり多少表現が省略されていても適法とされる場合があるとされています(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版68ページ)。
 最高裁1957年3月28日第一小法廷判決は、附帯控訴申立書の第1審判決の表示について、控訴の事件番号(御庁昭和三〇年(ネ)第一六四号家屋明渡事件の記載)と、家屋の所在が金沢市であることから、第1審裁判所が金沢地裁と伺えることで足りるとしています(裁判要旨には「附帯控訴状の記載全体から第一審判決を窺知することができるときは、第一審判決の表示を欠く違法があるとはいえない。」とされています)。
 さらに、最高裁1965年6月8日第三小法廷判決は、控訴事件番号を表示し、敗訴部分について拡張する旨の記載をした準備書面と題する文書は適法な附帯控訴状であるとしています(裁判要旨には「附帯控訴状において控訴事件の表示があるときは、第一審判決の表示がなくても、右附帯控訴状は適法である。」とされています)。
 最高裁1967年6月1日第一小法廷判決は、控訴審において控訴事件番号を表示して請求の趣旨を拡張し請求の原因を一部変更することを記載した「「請求の趣旨の拡張および請求原因変更の申立」の陳述は附帯控訴に他ならないとしています(裁判要旨には「二審において、全部勝訴した当事者が、判示の記載のような請求の趣旨の拡張の申立をしたときには、実質的に附帯控訴の申立をしたものと解することができる。」とされています)。
 このように、法律上の必要的記載事項である第1審判決の表示を欠いている場合でも救済されていて、かなり緩やかに許容されているといえます。控訴と附帯控訴があるときに、附帯控訴だけ不適法で審理しないということになると不公平なことになるという配慮もあるのかなと感じられます。

 控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「控訴(民事裁判)」でも説明しています。

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