◆短くわかる民事裁判◆
判決に対する上訴:控訴・上告
原告の訴えによって開始した訴訟について、第1審裁判所が結論として言い渡した判決に対して不服がある当事者は、控訴をすることができます。
そして、その控訴に応じて、第2審(控訴審)の裁判所が結論として言い渡した判決に対して不服がある当事者は、上告をすることができます。
言い換えれば、判決に対する1度目の不服申立てを控訴、2度目の不服申立てを上告と呼んでいます。
ただし、最高裁への上訴は判決に対する1度目の不服申立ての場合でも上告と呼びます(裁判所法上、最高裁が裁判権を有するのは、上告と、「訴訟法において特に定める抗告」のみなので:裁判所法第7条)。
控訴、上告の対象となる判決は「終局判決」です(民事訴訟法第281条第1項、第311条第1項)。
※民事訴訟法上、終局判決以外の判決として「中間判決」(民事訴訟法第245条)がありますが、現実には中間判決が行われる事件は稀です。
地方裁判所が第1審の事件では、控訴は高等裁判所が担当し(裁判所法第16条第1号)、その高裁の判決に対する上告は最高裁判所が担当します(民事訴訟法第311条第1項)。
※家庭裁判所が第1審の事件も同じです。
簡易裁判所が第1審の事件では、控訴は地方裁判所が担当し(裁判所法第24条第3号)、その地裁の判決に対する上告は高等裁判所が担当します(民事訴訟法第311条第1項)。この高裁の上告審としての判決に対しては、憲法違反を理由として最高裁に特別上告をすることができます(民事訴訟法第327条第1項)が、特別上告には確定を妨げる効力はなく(民事訴訟法第116条の確定を遮断する上告から明示して除外されています)、特別上告をした場合でも、高裁の上告審としての判決言渡によって確定します。
第1審の判決後に当事者双方がともに直接上告する権利を留保して(りゅうほ:その権利があるということを述べて)控訴はしないという合意をしたときは、その事件の当事者は、(控訴審を経ずに)直接上告をすることができます(民事訴訟法第281条第1項、第331条第2項)。これを「飛躍上告(ひやくじょうこく)」と呼んでいます。飛躍上告は地方裁判所が第1審の事件では最高裁に、簡易裁判所が第1審の事件では高等裁判所に対して行います(民事訴訟法第311条第2項)。
事実関係に争いがなく(1審判決の事実認定には双方不服がなく)、法律適用・法解釈のみについて不満があるというときに、直ちに上告審(最終審)に持ち込むことで早期確定を図るという趣旨のものです。民事裁判でどれだけ利用例があるのかは、司法統計年報でも項目も立てられておらず、不明です。私はまったく経験がありません。
※人身保護請求(立法時の想定と異なり、現実には夫婦・親族間の未成年者の取り合いに用いられています)は、第1審裁判所は土地管轄のある(請求者、相手方=拘束者、被拘束者のいずれかの所在地を管轄する)地裁か高裁を請求者が選択でき(人身保護法第4条)、上訴はすべて最高裁に行うこととされています(人身保護法第21条)。
上訴についてはモバイル新館の「判決に不服があるとき(民事裁判の控訴・上告・再審)」でも説明しています。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
**_****_**