◆短くわかる民事裁判◆
控訴審での反訴
被告は、原告が提起した訴えの請求やそれに対する被告側の防御(反論)に関連する請求を原告に対して反訴を提起して請求することができます(民事訴訟法第146条)。これを「反訴(はんそ)」と呼んでいます。
反訴は、控訴審で提起するには、相手方(第1審の原告)の同意が必要です(民事訴訟法第300条第1項)。相手方が異議を述べずに反訴の内容について認否や反論をした場合は、同意したものとみなされます(民事訴訟法第300条第2項)。
控訴審での反訴に相手方の同意を要件としているのは、相手方が第1審での審理を受ける利益(審級の利益:しんきゅうのりえき)を守るためなので、反訴の内容が第1審で十分審理されているような場合には、相手方の同意がなくても反訴を提起することができると解されています。最高裁1963年2月21日第一小法廷判決は、建物明渡請求訴訟に対して被告が賃借権の存在を主張し、その主張が認められて原告の請求が棄却され、原告が控訴した控訴審で、1審被告である被控訴人が賃借権確認請求の反訴を提起したという事案では「控訴人(上告人)をして一審を失う不利益を与えるものとは解されず、従つて、右反訴提起については同人の同意を要しないものと解するのが相当である。」としています。
同様の理由で反訴に相手方の同意を要しないとされたものとして、交通事故の損害賠償債務の不存在確認請求の本訴に対してその事故に基づく損害賠償請求の反訴をした場合(大阪高裁2006年9月28日判決)、土地所有権に基づく不法占拠の損害賠償請求事件の本訴で所有権が主たる争点とされた事案で所有権移転登記請求の反訴をした場合(大阪高裁1969年5月29日判決)などがあります。
控訴審で行った反訴に相手方が同意しない(異議を述べた)場合には、実質的に相手方の審級の利益を害さないから同意を要しないとされた場合を除き、反訴は不適法なものと却下されることになります(裁判所Web掲載例で私が見つけられた例として、知財高裁2020年1月29日判決、東京高裁1970年6月29日判決などがあります)。
却下の判決に対する不服申立ては上告、上告受理申立てになりますが、反訴の内容の別訴が提起できますので、別訴による方が現実的だと思います。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
**_****_**