◆短くわかる民事裁判◆
控訴審での人証調べの実情
控訴審では、特に高裁では、基本的には第1回口頭弁論期日で弁論終結するのがふつうで、続行期日や、ましてや人証調べなど裁判所は基本的には想定していないと、弁護士の肌感覚では思います。
現実にはどれくらい控訴審での人証調べが行われているでしょうか。
司法統計年報で全国の高等裁判所の控訴審通常民事訴訟の終了事件数と(参考までに判決数)、証人尋問実施事件数、本人尋問実施事件数を調べると次のようになっています。
年 終了事件総数 うち判決 証人尋問実施事件数 本人尋問実施事件数 2023 13,535 8,542 104 125 2022 13,439 8,456 111 140 2021 12,110 7,286 93 112 2020 10,398 5,956 93 101 2019 12,228 7,176 133 133 2018 12,922 7,593 141 168 2017 13,744 7,974 148 185 2016 14,415 8,484 187 180 2015 15,622 8,935 148 167 2014 15,308 8,824 117 122
証人尋問(本人以外の者を尋問したもの)と本人尋問はダブっている(両方を行った)事件も多いのではないかと思いますが、司法統計年報ではそこがわかりません。また、証人尋問・本人尋問を行った事件がすべて判決になっているかというと、そうとは限らず、尋問後に和解しているというパターンも相当にあると考えられます。そういうこともあり、司法統計年報の数字からどのように評価するかはなかなかに難しいところがあります。
「裁判の迅速化に係る検証報告書」によれば、控訴審での人証調べ実施率は、2022年に終了した事件で1.6%(こちらのファイルの237ページ【表15】)、2020年に終了した事件でも1.6%(こちらのファイルの211ページ【表15】)、2018年に終了した事件で1.9%(こちらのファイルの149ページ【表15】)、2016年に終了した事件で2.1%(こちらのファイルの137ページ【表15】)、2014年に終了した事件で1.3%(こちらのファイルの198ページ【表15】)とされています。
そうすると、控訴審通常事件の中で人証調べが実施される事件は2%弱程度ということになります。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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