◆短くわかる民事裁判◆
控訴審での書証の提出
敗訴した第1審判決を覆すためには、基本的には、第1審判決の事実認定を覆し、そこまで行かなくても疑問視させるような新たな証拠を探して提出することが、とても重要だと思います。
事実認定はまったくそのままで、原判決の法的評価や法解釈が誤りであるということが認められることもないではありません。そういうときは控訴理由書で論理で追及してある種、力技で説得するということになります。しかし、それは1審の裁判官の価値観がちょっと変わっているというかあまり一般的でないような場合に限られます。そこをきちんと考えないで、ただ裁判官が替われば評価が変わるかもということだけに期待するのなら、その控訴は「ダメ元」という認識でやるべきでしょう。
ですから、原判決の法的評価や法解釈がおかしい、それが最終ターゲットだという控訴でも、まずは事実認定を少しでも有利に変えられないかを追求すべきです。
控訴審に限らず私が新たに依頼を受けるときには、まず依頼者が持っている資料に何があるのかをよく聞き、見せてもらいます。控訴審では、特に、原判決の事実認定に問題があると見られるときはもちろん、法的な評価なり法解釈に問題があると見られる場合であっても、新たな証拠が提出できるに越したことはありません。法的な評価や法解釈を変更するのも、事実認定が少しでも変わる方がそれを促しやすいことが多いですし、控訴審の裁判官が事実認定を変えるには、やはりまったく同じ証拠を前提に1審の裁判官の認定が誤りだとするよりも新たな証拠が加わったから認定が変わるという方が覆せるハードルが低くなります。
控訴審で相談に来た依頼者に聞くと、1審で担当した弁護士には見せていなかった書類や1審の弁護士に言ったが目を通してくれなかったという書類を持っていることが多くあります。依頼者自身が十分探索していない電子メールやSMS、LINEなどのやりとり、まだ書き起こしていない録音などが、検討もされずに埋もれているということも、最近ではよくあります。もちろん使えない場合も多いですが、そこに宝が眠っていることもあります。依頼者が亡くなった方の日記やカルテ・看護記録などを持っていて、それを使って逆転勝訴したり、裁判官から逆転勝訴の心証を示されて有利な和解をしたこともあります。量が多いとなかなか目を通せないということはあると思いますが、もったいないことです。
他方で、新たに提出できるものは何もないと、特に十分に探す努力もしないで簡単にいう人の場合、控訴審で覆せる可能性は、それだけでもうかなり低くなると思います。
控訴審で書証を提出する場合、1審で原告だった側は、控訴人であれ被控訴人であれ、1審に続けて甲号証を、1審で最後に提出した書証番号に続けた番号を振って提出し、1審で被告であった側は乙号証を提出します。
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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