◆短くわかる民事裁判◆
控訴審での和解
控訴審でも、多くの場合、和解勧告があり、和解期日が持たれます(よほど一方的な敗訴確実な事件や、一方が絶対和解しないという強い意思を見せている場合以外は、和解勧告があるのがふつうです)。
控訴審での和解は、通常は右陪席裁判官か左陪席裁判官が受命裁判官に指定されてその1人で行います。裁判長が和解に立ち会うことは稀です。和解は、通常、書記官室脇の小部屋で行われます(コロナ禍の頃には、東京高裁が書記官室脇の部屋を使いたくなくて法廷で和解期日を行うことがよくありましたが、今はもう法廷で行うことはまずありません)。
和解の場面では、第1審でも裁判官が心証開示をすることが多くなっていますが、控訴審では裁判官が心証を開示した上で和解の協議をするのがふつうです。弁論続行の上で並行して和解を進めることもありますが、多くの場合は弁論終結の上で和解期日に臨んでいますので、もう心証は固まっているのがふつうです。
したがって、敗訴が見込まれる側には、当然大幅な譲歩が求められ、和解しなければ敗訴だとはっきり言われることが多いです。相手が附帯控訴している場合など、判決なら附帯控訴が認められて第1審判決よりさらに不利な結果になるから、控訴を取り下げた方がいいんじゃないか(和解としては0回答)といわれることさえあります(まぁ、そういうのは、弁護士はそう思うから控訴なんてしなくていいんじゃないかと言ったのに当事者が納得できないと言って控訴したときですけど)。
裁判官から示された心証が予想外の場合、驚いた当事者が弁論再開をしたいと言い出すことが稀ではありませんが、裁判所が終結した弁論を再開することは稀で、特に高裁ではまずないと言っていいのが実情です。
控訴審では、第1審と違って、担当裁判官と初めて会ったその日にもう弁論終結というのがふつうなので、心証が読めないのは仕方ないところもあり(それでも判決と控訴理由書・答弁書と提出書証で情勢を判断するのが弁護士の仕事なんですが)、それはないよなぁと思うこともありますが。
いずれにしても、判決は通常、勝ちか負けかで、裁判所からほぼ確定的な心証を示して和解の決断を求められますので、判決と和解案のどちらをとるか、腹を据えて決断するしかありません。
司法統計年報を見ると、全国の高等裁判所での控訴審の和解件数は次のとおりです。全事件の3割前後が和解で終了していることがわかります。
年 終了事件総数 うち和解 割合 2023 13,535 3,649 26.96% 2022 13,439 3,641 27.09% 2021 12,110 3,556 29.36% 2020 10,398 3,273 31.48% 2019 12,228 3,978 32.53% 2018 12,922 4,151 32.12% 2017 13,744 4,365 31.76% 2016 14,415 4,604 31.94% 2015 15,622 4,931 31.56% 2014 15,308 5,041 32.93%
控訴については「控訴の話(民事裁判)」でも説明しています。
モバイル新館の「控訴(民事裁判)」でも説明しています。
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