◆短くわかる民事裁判◆
再抗告が認められるとき
再抗告がどのようなときに認められているか、興味深いところですが、今回参考にさせてもらっている2000年度裁判所書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版でも、再抗告の認容例は戦前の大審院の判例しか掲載されていません(302ページ)。
裁判所Webの裁判例検索で「再抗告」で出てきた判決をひととおり見ましたところ、民事訴訟法関係(民事執行法関係の事件を別として)では、3件しか見つけられませんでした。
東京高裁1955年5月20日決定は、付調停の決定に対する即時抗告が可能かどうかの法解釈について、即時抗告できないとした原決定を取り消し、東京地裁に差し戻しています。
東京高裁1965年10月11日決定は、訴訟引受申立てに関する法解釈について、訴訟引受申立てを却下した原決定を取り消し、東京地裁に差し戻しています(請求異議訴訟なので、民事執行法の事件ということもできますが)。
裁判所Webで見つけた中で一番劇的なのは、大阪高裁2004年5月10日決定で、1審の伊丹簡裁が再審請求を却下したのに対する即時抗告審の神戸地裁2003年10月9日決定がこれを取り消して再審請求を棄却したところ、再抗告審で神戸地裁の再審請求棄却決定を取り消して再審開始決定をしたというのです。めったにない民事再審開始が1審、2審を覆して認められたというだけでも、劇的な展開と言えます。この大阪高裁の再審開始決定に対して相手方(再審請求の被告)が最高裁に特別抗告をして、最高裁がこの再抗告は性質上即時抗告だから再抗告申立ては即時抗告期間内に行わなければならず、本件では再抗告申立てが決定(神戸地裁決定)の告知を受けた日から8日後だったことを捉えて再抗告は不適法だからと、再抗告を認容した大阪高裁決定を破棄して、再抗告を却下するという決定をしました(最高裁2004年9月17日第三小法廷決定)。
なお、再抗告で原決定が破棄されて原裁判所に差し戻された場合、民事訴訟法第325条第4項が準用されているので、原決定に関与した裁判官は差し戻し審に関与できません(民事訴訟法第331条但し書き、第325条)。
※再抗告でない最初の即時抗告・通常抗告ではこの規定が準用されず、原決定に関与した裁判官が差し戻し審に関与することも可能と解されています。控訴審判決が原判決を取り消して差し戻した場合に1審判決の裁判長が差し戻し審の裁判長となっても「裁判の公正を妨げるべき事情」(裁判官忌避の理由)にならないとされています(最高裁2006年6月23日第二小法廷決定:判例時報1972号15〜16ページ【1】。その解説の中で最高裁調査官が上告審による差し戻しと違って控訴審による差し戻しの場合はそれでいいのだということを解説しています。
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