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短くわかる民事裁判◆
3号再審事由:新株発行無効認容判決
 新株発行無効の訴えを認容する判決確定後にその訴訟と判決の存在を知ったその新株発行によって株主となった者(したがって判決により株主としての地位を否定された者)が独立当事者参加の申出(会社と確定判決原告である株主に対し、株主権確認請求をする)とともに民事訴訟法第338条第1項第3号の再審事由があるとして再審請求をした事案で、最高裁2013年11月21日第一小法廷決定は、「新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになるというべきである。」とした上で、再審事由について「 新株発行の無効の訴えは、株式の発行をした株式会社のみが被告適格を有するとされているのであるから(会社法834条2号)、上記株式会社によって上記訴えに係る訴訟が追行されている以上、上記訴訟の確定判決の効力を受ける第三者が、上記訴訟の係属を知らず、上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかったとしても、直ちに上記確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由があるということはできない。しかし、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないのであり(民訴法2条)、とりわけ、新株発行の無効の訴えの被告適格が与えられた株式会社は、事実上、上記確定判決の効力を受ける第三者に代わって手続に関与するという立場にもあることから、上記株式会社には、上記第三者の利益に配慮し、より一層、信義に従った訴訟活動をすることが求められるところである。そうすると、上記株式会社による訴訟活動がおよそいかなるものであったとしても、上記第三者が後に上記確定判決の効力を一切争うことができないと解することは、手続保障の観点から是認することはできないのであって、上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。」としました。
 少数株主である再審原告は、判決の効力が及ぶとはいえ、新株発行無効確認の訴えの被告は会社のみなので本来その訴訟手続に関与することが保障されていないのだから、審理に関与する機会が与えられなくてもある意味当然で、それが再審事由には当たらないのが原則、しかし判決が第三者にも及ぶ訴訟の被告である会社の訴訟活動が著しく信義に反するとき、いわばなれ合い訴訟のような場合は、3号再審事由があるというのですね。
 この判決は、具体的事案について、「本件において、抗告人は、前訴の係属前から、相手方Y1に対して内容証明郵便により本件株式発行の有効性を主張するなどしており、仮に前訴の係属を知れば、自らの権利を守るために前訴に参加するなどして相手方Y2による本件株式発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり、かつ、相手方Y1はそのような状況にあることを十分に認識していたということができる。それにもかかわらず、相手方Y1は、前訴において、相手方Y2の請求を全く争わず、かえって、請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し、自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出したほか、前訴の係属を知らない抗告人に対して前訴の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず、これを知らせなかった。その結果、抗告人は、前訴に参加するなどして本件株式発行の無効を求める請求を争う機会を逸したものである。このような一連の経緯に鑑みると、前訴における相手方Y1の訴訟活動は会社法により被告適格を与えられた者によるものとして著しく信義に反しており、抗告人に前訴判決の効力を及ぼすことは手続保障の観点から看過することができないものとして、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるというべきである。 しかるに、原審は、上記の観点からの審理を尽くさず、上記の再審事由の存在を否定したのであるから、原審の上記判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」として、原判決を破棄し、(原告適格を認める前提としての独立当事者参加の適法性とともに)再審事由について更に審理させるため、原裁判所に差し戻しました。

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