庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

短くわかる民事裁判◆
5号再審事由:訴状等の毀棄・判決正本の隠匿
 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響すべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたことという5号再審事由による再審請求(再審の訴え)が認容されたケースとして、被告の同居の妻が送達をされた訴状副本等を被告に渡さずに毀棄し、送達された判決正本も被告に渡さすに隠匿していたために被告が訴訟の存在を知らずに判決を受け確定したという事例を紹介します。

 横浜地裁に提訴された所有権移転登記請求訴訟の訴状副本と第1回期日呼出状が被告と同居する妻に交付されて補充送達(同居人等への交付による送達:民事訴訟法第106条第1項)されましたが、妻は被告にこれを渡さずに毀棄し、その後の期日呼出状も同居の妻に交付されて送達されましたが妻は同様に被告に渡さずに毀棄し、被告が欠席のままで被告敗訴の判決が言い渡され、判決正本も同居の妻に交付されて送達されましたが妻はこれを被告に渡さずに隠匿していました。
 その後その事実を知った被告が、訴状副本と第1回期日呼出状の毀棄行為について妻を公文書毀棄罪で告訴し、検察官が起訴猶予処分とし、被告がさらに第1回期日以外の期日呼出状の毀棄行為と判決正本の隠匿行為について妻を告訴し、検察官がそれについても起訴猶予処分としました。
 被告が5号再審事由を理由として再審請求(再審の訴えを提起)し、請求が認容され、最高裁1972年4月28日第二小法廷判決はこのような「事実関係のもとにおいては被上告人の本件再審の訴には、民訴法420条1項5号および同条2項後段に該当する事由があるものというべきである」として上告を棄却しました(判決が引用している民事訴訟法の条項は当時のものであり現行法の条項とは異なります)。
 なお、あわせて「同居の妻であつても、同条1項5号にいう『他人』にあたると解した原判決になんらの違法は認められない。」ことも判示されています。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

**_**区切り線**_**

短くわかる民事裁判に戻る

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ

民事裁判の話民事裁判の話へ   もばいるモバイル新館 民事裁判の話