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6号再審事由と判決の証拠となった文書
 「判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。」という6号再審事由による再審請求(再審の訴え)では、証拠として提出された文書等が偽造または変造されたものであることを立証する必要があり、その偽造または変造されたものと立証できた文書等が、判決の証拠となっていて、その書証による認定があるかないかで判決主文に影響を及ぼすような場合である必要があります。(そのほかに、民事訴訟法第338条第2項の有罪判決要件、民事訴訟法第338条第1項但し書きの再審の補充性、民事訴訟法第342条の再審期間の問題もクリアする必要があります)

 最高裁1968年3月15日第二小法廷判決は、「仮りに所論のとおり、本件養子縁組の届出書の訴外亡D作成名義の部分が訴外Eの偽造したものであり、かつ、右偽造の届出書に基づいて権利義務に関する公正証書の原本である戸籍簿に不実の記載がなされた結果、これに一致する戸籍謄本も同条一項六号にいう偽造文書にあたることになると解すべきものとしても、本件記録に徴するに、右養子縁組届が証拠として提出されたことはなく、第二審判決(およびその引用する第一審判決。以下同じ。)において認定の用に供されていないことは明らかであり、また所論甲第二号証戸籍謄本の記載も、右判決中において縁組が有効か無効かの判断に用いられているわけではないものと解されるから、右偽造および不実記載の事実は右判決の結論に影響を及ぼさないものということができる。」と判示し、公訴時効が成立したことで有罪判決に代わるもの(証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないとき:民事訴訟法第338条第2項)の要件を満たしたことを前提に、仮に養子縁組届出書が偽造で戸籍謄本それにより作成された不実の文書であると言えたとしても前者は証拠提出されておらず、後者は縁組の有効・無効の判断に用いられているわけではないと解されるから、偽造が判決の結論に影響を及ぼさない、判決の証拠となったといえないことを判示しています。
 養子縁組無効確認請求訴訟で、養子縁組に直接関連する縁組届が偽造で戸籍謄本は不実のものとなれば、重要な文章の偽造があったといいたくなりますが、再審事由としては、偽造という行為の悪性、重大性ではなく(相手が偽造という悪いことをする奴だから負かすべきだということではなく)、あくまでも判決の結論に影響を与えたか、判決の認定判断の根拠となっているかであることに注意する必要があります。

 同様に、最高裁1967年1月27日第二小法廷判決でも「民訴法420条1項6号および7号にいう『判決ノ証拠ト為リタル』とは、再審の訴をもつて不服を申し立てられた確定判決の理由中において当該証拠を事実認定の資料としていることをいうものと解すべき」とした上で、「Dの所論証言、所論売渡証が本件再審の訴をもつて不服を申し立てられている確定判決において事実認定の資料とされていないことは、右判決の判文上、明らかであるから、右証言および文書は右確定判決の証拠となつていないものというべきである」と判示して、再審原告の主張を退けています。

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 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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