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6号再審事由認容例:最高裁1963年4月12日第二小法廷判決
 判決の証拠となった文書が偽造されたものであったことという6号再審事由を認定した最高裁判決の事例を紹介します。この判決は、再審請求ではなく、上告審で6号再審事由を認めて、それを適法な上告理由として原判決を破棄して差し戻したものですが、最高裁が6号再審事由に該当すると判示したのですから、再審請求でも同様の事案では再審事由が認められることになります。

 最高裁1963年4月12日第二小法廷判決は、「原判決の引用する一審判決は、原告(被上告人)提出の本件約束手形(甲第一号証)が真正に成立したものとし、これを証拠として被告(上告人)が訴外Gをして振出人の記名押印を代行せしめて本件約束手形を振出したと認定し、よつて原告の被告に対する本訴手形金請求を認容したものであること判文上明らかである。しかるに、当審における上告人の主張事実中、訴外Gが本件約束手形を偽造したとして昭和三六年五月一一日佐賀地方裁判所において有罪の判決を受けたとの点は、被上告人の認めるところであり、右判決が同月二六日確定したことは上告人提出の当該判決の確定証明書により認められる。」、「民訴四二〇条一項六号二項によれば、文書その他の物件が偽造または変造せられたことの有罪判決が確定したときは、その文書または物件を証拠とした民事判決が既に確定した後でも、当該判決を為した裁判所に対し再審の訴により新に審理を求めることができる。」として、6号再審事由に該当することを認めました(旧民事訴訟法第420条は現在の民事訴訟法第338条に当たります)。
 約束手形金請求で約束手形は最も基本的な重要証拠です。その約束手形が偽造されたものであるとして有罪判決が確定したのですから、当然に6号再審事由が認められたというものです。

 この判決は、続いて「ただし、当事者が上訴によりその事由を主張したときまたはこれを知つて主張しなかつたときはこの限りでない旨を規定するが、右規定の趣旨に徴すれば、当該判決が控訴判決であつて、これに対し上告がなされたときは、上告人は前記の理由によつて控訴判決を破棄し、控訴裁判所において新に審理すべきことを求めうるものと解すべきである」と判示しています。
 この判示は、再審の補充性を定める民事訴訟法第338条第1項但し書きの規定があることから再審事由が上告理由になると解しているように読めます。そのことが、現行民事訴訟法施行後は(1号〜3号の絶対的上告理由=民事訴訟法第312条第2項と同文の事由以外の)再審事由は上告理由とならないという最高裁の姿勢と、そういった現在の状況の下で上告について再審事由を主張したり(主張したが最高裁が具体的に判断を示さなかったとき)主張しなかったときに民事訴訟法第338条第1項但し書きの適用があるのかという問題(最高裁はこの点について明確な判断を示していないと考えられています)に微妙な影響があるのではないかという気がします。

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