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短くわかる民事裁判◆
7号再審事由認容例:大阪高裁2014年2月17日決定
 当事者の虚偽の陳述が判決の証拠となったことという7号再審事由による再審請求(再審の訴え)が認容された典型的な事例を紹介します。

 原告の先代が被告の先代から1967年3月に締結された交換契約により土地を譲り受けたと主張して原告が被告に対しその土地の一部の引渡と所有権移転登記請求の訴訟を提起しました。その訴訟では交換契約が締結されたか否かが主たる争点になり、原告は、被告の依頼によって原告が交換対象の原告の先代が被告の先代に譲渡した土地を担保に1990年6月に金融機関から6000万円を借り入れてその6000万円を原告の先代から被告の親族経由で被告に渡したと主張し、被告は第1審での被告本人尋問で宣誓の上、1990年6月頃に親族を通して6000万円を受領したことはないと述べ、原告の請求を棄却する判決が言い渡され確定しました。原告は、その後、控訴審判決言い渡し直前に発見したという被告名義の領収書に基づいて被告の裁判での陳述は虚偽の陳述であるとして、第1審裁判所に過料の裁判の申立書を提出し、裁判所は被告に対し過料10万円に処する決定(民事訴訟法第209条第1項)をし、その決定が確定しました。
 それを受けて原告が、確定判決に対し、民事訴訟法第338条第1項第7号の再審事由があるとして再審の訴えを提起しました。大阪高裁は領収書が偽造であるという被告の主張を退け、被告の陳述は虚偽のものと認められるとして再審開始決定をしました(大阪高裁2014年2月17日決定)。
 被告が、領収書が判決確定前に入手されているから民事訴訟法第338条第1項但し書き(再審の補充性)により再審請求は許されない、領収証は偽造であるとして許可抗告をし、最高裁2014年6月26日第一小法廷決定は、抗告を棄却しました(判例時報2291号13〜14ページ【11】)。
 判例時報掲載の調査官のコメントでは、被告が主張した再審の補充性に関する点は、本件では過料の裁判が判決確定後なので、民事訴訟法第338条第1項但し書きにより再審請求ができなくなるのは、4号〜7号再審事由については、民事訴訟法第338条第2項の要件(有罪判決要件)を満たしていることを知りながら主張しなかった場合に限られるとする最高裁1972年5月30日第三小法廷判決に照らして、民事訴訟法第338条第1項但し書きが適用されて再審請求ができなくなるということはないとされています。
※判例時報掲載の調査官のコメントによれば、再審開始決定確定後に行われた再審では、領収書は真正に成立したとは認められないとして原告の請求を棄却する判決が言い渡され、その後確定したとのことです。

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 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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