庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

短くわかる民事裁判◆
7号再審事由認容例:最高裁1968年5月2日第一小法廷判決
 証人の虚偽の陳述が判決の証拠となったことという7号再審事由を認定した最高裁判決の事例を紹介します。この判決は、再審請求ではなく、上告審で7号再審事由を認めて、それを適法な上告理由として原判決を破棄して差し戻したものですが、最高裁が7号再審事由に該当すると判示したのですから、再審請求でも同様の事案では再審事由が認められることになります。

 最高裁1968年5月2日第一小法廷判決は、「原審は、本件約束手形は上告人が被上告人に対して単なる見せ手形として振り出したものにすぎないから、上告人は右手形金およびその遅延損害金の支払義務を負わない旨の上告人の仮定抗弁につき、その抗弁事実にそう第一審および原審における証人Eおよび上告人本人の各供述等の証拠資料が存在することを認めながら、それらの証拠資料は、原審証人Dの証言およびその証言により真正に成立したことの認められる甲第四号証等の証拠資料と対比して信用することができないとの理由で、これを採用せず、結局、右抗弁事実を認める証拠がないとして右抗弁を排斥し、被上告人の右手形金およびその遅延損害金の請求の大部分を認容したものであることは、原判文に徴して明らかであり、しかも、原判決挙示の各証拠資料を検討すると、右Dの証言およびその証言により真正に成立したと認められた甲第四号証は、右対比に供された各証拠資料のうちできわめて重要な地位を占めるものであることが窺われる。」とし、他方で証人Dの偽証に関する刑事処分について「そして、上告代理人の提出した検察事務官作成の不起訴裁定書謄本によれば、水戸地方検察庁日立支部検察官は、昭和四〇年一二月二八日前記証人Dの前記証言に関する偽証告訴事件について、その証言が偽証であることの証明は十分であるが、同人がその後同証言が偽証であることを自白している等の諸般の情状に照らし、同人を起訴猶予にするのが相当であるとして、不起訴処分にしたものであることが認められ、また、右不起訴裁定書謄本によれば、右証人の偽証は、右証言の全体にわたり、かつ、その本質部分に関するものであることが窺われる。」と判示して、「してみれば、原判決には民訴法四二〇条一項七号、二項後段所定の再審事由に該当する違法があり、そして、その違法は適法な上告理由に当たると解すべきである。」と結論づけました。(旧民事訴訟法第420条は現在の民事訴訟法第338条に当たります)

 このケースでは、手形金請求の事件で、その手形は単なる見せ手形として振り出された(取引があってその支払のために振り出されたものではなく、第三者を騙すなどの目的で振り出されてそれを受取人もわかっていた)という、その主張が認められれば原告の請求が棄却されることになる被告の主張、つまり判決の結論に直接影響する主張について、その事実を認めない理由となっている証人の証言(その証人の証言と、その証言によって真正に成立した(偽造ではない)と認定した書証によって被告の主張事実を否定した)が偽証であることが検察官の不起訴裁定書によって立証され、しかもその不起訴裁定書に偽証部分が記載されているという事情から、7号再審事由が認められたものと考えられます。
 判決の結論に直接影響する証言が偽証とされたことと、偽証の内容が記載された検察官の不起訴裁定書を入手して提出できたことが大きなポイントになったものと思われます。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

**_**区切り線**_**

短くわかる民事裁判に戻る

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ

民事裁判の話民事裁判の話へ   もばいるモバイル新館 民事裁判の話