◆短くわかる民事裁判◆
9号再審事由認容例:最高裁1964年3月24日第三小法廷判決
最高裁判決(上告審判決)に判断の遺脱(9号再審事由)があるとして行った(最高裁に対する)再審の訴えが、ことごとく退けられていることは、「最高裁判決に対する判断の遺脱の主張」で詳しく説明しているとおりです。
その中で、最高裁が自身の判決(確定判決)に判断の遺脱があったと認めた希有の例(おそらくは唯一の例)を紹介します。
確定判決の上告審(再審請求の対象とされた判決)で、上告理由書が1962年4月27日に提出されたのに対して、最高裁第二小法廷は上告受理通知書が上告人代理人に送達されたのは同年3月7日であるから上告理由書提出期限を経過した後(期限の翌日)に提出されたものとして、期限内に上告理由書を提出しなかったことを理由に上告を却下する判決を言い渡しました(最高裁1962年8月3日第二小法廷判決)。
ところが、その上告受理通知書の送達報告書の記載が、不注意による誤記で、実際の送達日は同年3月8日であることがわかり、上告理由書は提出期限内に提出されていたという判断になりました。
そうすると、確定判決は、本当は適法に提出されていた上告理由書の内容については何も判断せずに、提出期限内に上告理由書が提出されなかったという(間違った)理由で上告を棄却したのですから、これはどう頑張っても判断の遺脱があったというほかはありません。
最高裁1964年3月24日第三小法廷判決は、「してみれば、再審原告の所論上告理由書は、法定の期間内に提出されたものといわねばならず、前示の如き誤記ある送達報告書に依拠し十分な職権調査を尽さずしてなされた右第二小法廷判決は、畢竟、判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したものというのほかなく、民訴法420条1項9号に該当し、本件再審の申立は理由がある」として再審(確定判決の取消)を認めました。
しかし、同判決は、その上告理由記載の上告理由は、すべて理由がない(適法な上告理由に当たらない)として、上告を棄却しました。判決主文は、「当裁判所第二小法廷が昭和三七年八月三日前示事件について言い渡した判決を破棄する。右事件における再審原告の上告を棄却する。訴訟費用中、再審に関する分は再審被告の負担とし、上告に関する分は上告人の負担とする。」でした。
※もともとそうだったということなのでしょうけれども、却下が不満なら棄却にしてやる、最高裁に9号再審事由(判断の遺脱)があると認めさせても再審原告にいいことはないぞと、いっているように感じられます。
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再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
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