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再審請求の原告適格:会社の組織に関する訴え認容判決
 会社の設立無効の訴え、新株発行無効の訴え、会社の組織変更や合併の無効の訴え、株主総会決議の取消・無効確認の訴え、会社解散の訴えなどの会社の組織に関する訴え(会社法第834条)を認容する確定判決は第三者に対しても効力が及びます(会社法第838条)。
 この判決の効力が及ぶ、判決によって不利益を受ける者は、確定判決に対して再審請求をすることができるでしょうか。
 新株発行無効の訴えを認容する判決確定後にその訴訟と判決の存在を知ったその新株発行によって株主となった者(したがって判決により株主としての地位を否定された者)が独立当事者参加の申出(会社と確定判決原告である株主に対し、株主権確認請求をする)とともに再審請求をした事案で、最高裁2013年11月21日第一小法廷決定は、「新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、再審原告として上記確定判決に対する再審の訴えを提起したとしても、上記確定判決に係る訴訟の当事者ではない以上、上記訴訟の本案についての訴訟行為をすることはできず、上記確定判決の判断を左右できる地位にはない。そのため、上記第三者は、上記確定判決に対する再審の訴えを提起してもその目的を達することができず、当然には上記再審の訴えの原告適格を有するということはできない。しかし、上記第三者が上記再審の訴えを提起するとともに独立当事者参加の申出をした場合には、上記第三者は、再審開始の決定が確定した後、当該独立当事者参加に係る訴訟行為をすることによって、合一確定の要請を介し、上記確定判決の判断を左右することができるようになる。なお、上記の場合には、再審開始の決定がされれば確定判決に係る訴訟の審理がされることになるから、独立当事者参加の申出をするために必要とされる訴訟係属があるということができる。」とし、「新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになるというべきである。」と判示しました。最高裁は、(補助参加人が再審の訴えの提起ができることを明定した民事訴訟法改正後においても、補助参加では足りず)あくまでも本案において独立して訴訟行為ができる独立当事者参加の申出をし、それが適法である場合に限って第三者である株主に再審請求の原告適格を認める立場を取っています。「上記の観点から本件独立当事者参加の適法性について検討することなく、抗告人が前訴判決の効力を受ける者であって共同訴訟的補助参加をすることができるものであるとして直ちに本件再審の訴えについての抗告人の原告適格を肯定したものであり、原審の上記判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」とまで述べています。

 会社解散の訴えを認容する判決確定後にその訴訟と判決を知った株主が独立当事者参加の申出(会社解散の訴えの請求棄却を求める)をするとともに再審請求をした事案で、最高裁2014年7月10日第一小法廷決定は、株式会社の解散の訴えを認容する確定判決の場合も、新株発行無効の訴えの場合と同様に、判決の効力を受ける第三者は独立当事者参加の申出をすることにより確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになると判示した上、最高裁1970年1月22日第一小法廷判決を引用して「独立当事者参加の申出は、参加人が参加を申し出た訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず、単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されないと解すべきである」という総論的判示をし、「これを本件についてみると、抗告人は、相手方Y1らと相手方会社との間の訴訟について独立当事者参加の申出をするとともに本件再審の訴えを提起したが、相手方Y1らの相手方会社に対する請求に対して請求棄却の判決を求めただけであって、相手方Y1ら又は相手方会社に対し何らの請求も提出していないことは記録上明らかである。そうすると、抗告人の上記独立当事者参加の申出は不適法である。なお、記録によれば、再審訴状の『再審の理由』欄には、相手方会社との関係で解散の事由が存在しないことの確認を求める旨の記載があることが認められる。しかし、仮に抗告人が上記独立当事者参加の申出につきこのような確認の請求を提出していたと解したとしても、このような事実の確認を求める訴えは確認の利益を欠くものというべきであって、上記独立当事者参加の申出が不適法であることに変わりはない。したがって、抗告人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということはできず、本件再審の訴えは不適法であるというべきである。」として、株主の原告適格を否定して原決定を破棄し、原々決定を取り消して、再審の訴えを却下しました。
 この判決には山浦裁判官の反対意見があり、多数株主が提起した解散の訴えに会社がなれ合いで反論せずに解散の訴えが認容されて確定した場合の少数株主は解散の訴えの請求棄却以外に求めるものもなく、独立当事者参加の形式を整えるために「相手方会社との関係で解散の事由が存在しないことの確認を求める」という確認請求をしたがそれでは確認の利益がないと否定されるのであるから、少数株主(再審原告)は会社や多数株主に対して請求を立てようもない、そのような場合に会社等に対する請求を求めることは不可能を強いるものであり、会社等に対する請求をしなくても再審請求の原告適格を認めるべきであるとされています。

※会社法は、役員等の責任を追及する訴えについては「原告及び被告が共謀して責任追及等の訴えに係る株式会社の権利を害する目的をもって判決をさせたときは、株式会社又は株主は、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。」と定めています(会社法第853条第1項)。役員等の責任追及の訴えがなれ合いで行われた場合については、第三者による再審請求ができることを特別に認めているわけです。会社の組織に関する訴え認容判決については、第三者に対しても効力が及ぶけれどもこのような規定がないので、民事訴訟法の解釈論でどうするかが論じられているのです。

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