◆短くわかる民事裁判◆
再審での本案の裁判
再審開始決定が確定し、本案の審理が行われて判決に熟すると弁論が終結されて、本案の判決が言い渡されることになります。
民事訴訟法第348条第2項は「裁判所は、前項の場合において、判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。」と定めています。
再審事由があり、再審請求の対象となる確定判決の事件を見直すための審理をしても、結論として元の確定判決が正当である(変更する必要がない)と判断したときは、確定判決を取り消さずに、再審請求を棄却する(しなければならない)というのです。
実例としては、当事者の陳述が虚偽であることが書証により認められて大阪高裁2014年2月17日決定で再審開始され、最高裁2014年6月26日第一小法廷決定で許可抗告が棄却されて再審開始決定が確定した事案で、本案の審理で再審原告提出の書証が真正に成立したとは認められない(むしろ再審原告が再審の訴えで提出した書証に偽造の疑いがあるということでしょうね)などとして再審請求を棄却する判決が言い渡されて確定したということが紹介されています(判例時報2291号13〜14ページ【11】)。
旧民事訴訟法時代(再審開始決定の制度がない)の例では、東京地裁1977年2月21日判決(判例時報869号67ページ)が、3号再審事由があると認めた上で確定判決が結論において正当であるとして再審請求を却下しています(旧民事訴訟法第428条は判決を正当とするときは再審の訴えを却下すべきとしていました)。
民事訴訟法第348条第3項は、「裁判所は、前項の場合を除き、判決を取り消した上、更に判決をしなければならない。」と定めています。
原判決(確定判決)を正当とする場合以外は、確定判決を取り消さなければならないのです。
被告であった再審原告が第1審、控訴審とも敗訴した確定判決の控訴審判決を取り消す場合の標準的な主文は「上記当事者間の東京高等裁判所令和○年(ネ)第○○号○○請求控訴事件について、同裁判所が令和○年○月○日に言い渡した確定判決を取り消す。第1審判決を取り消し、再審被告の請求を棄却する。訴訟費用は、前審及び再審を通じ、再審被告の負担とする。」となります。(実例として知財高裁2008年7月14日判決があります)
被告であった再審原告が第1審敗訴して控訴なく確定した確定判決を取り消す場合(3号再審事由が認められる場合はこのケースが多いと思います)の標準的な主文は「上記当事者間の東京地方裁判所令和○年(ワ)第○○号○○請求事件について、同裁判所が令和○年○月○日に言い渡した確定判決を取り消す。第1項記載の事件における再審被告の請求を棄却する。訴訟費用は、第1項記載の事件及び再審事件を通じ、再審被告の負担とする。」となります。(実例として岐阜地裁2002年9月26日判決:判例タイムズ1139号289ページ、新潟地裁高田支部2003年2月25日判決:判例時報1835号111ページ、仙台地裁2011年2月25日判決:判例タイムズ1348号226ページなどがあります)
第1審及び控訴審(さらには上告審)の原告・被告、控訴人・被控訴人(上告人・被上告人、申立人・相手方)、勝訴・敗訴の組み合わせ、本来の請求によって、さまざまなバリュエーションが考えられます。
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