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短くわかる民事裁判◆
再審請求の審理
 民事訴訟法は、再審の訴えに対して、訴えが不適法である場合は却下決定を、再審の事由がない場合には再審請求棄却決定を、再審の事由がある場合には再審開始決定をすべきことを定め(民事訴訟法第345条第1項、第2項、第346条第1項)、いずれの場合も決定を行うこととされています。
 そして、民事訴訟法第348条第1項は「裁判所は、再審開始の決定が確定した場合には、不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする。」と定めています。つまり、民事訴訟法上、再審の訴えについての審理は2段階に分けられ、再審開始決定確定前はすべて決定手続により再審の訴えの適法性と再審事由の有無のみが審理対象とされ、再審開始決定が確定して初めて本案の審理及び裁判がなされることになっています。
※これは1998年1月1日施行の現行民事訴訟法で初めて採用されたもので、旧民事訴訟法ではこのような区分はありませんでした。

 決定手続では、口頭弁論を開くかどうかは裁判所が自由に決めることができ(民事訴訟法第87条第1項但し書き)、口頭弁論を開かない場合は裁判所は特に方式の定めがない「審尋(しんじん)」という手続で当事者の意見を聞くことができるとされています(民事訴訟法第87条第2項)。
 再審請求に対する決定の手続では、再審開始決定をする場合には再審被告を審尋しなければならないという定め(民事訴訟法第346条第2項)がある以外には、手続について特段の規定はありません。
 したがって、裁判所は、その判断で口頭弁論を開くこともできますし、口頭弁論を開かずに当事者を審尋することもできますが、口頭弁論を開かず審尋もせず、書面審理だけで当事者に釈明や指示・連絡もせずに決定を行うこともできます。
 再審開始決定を行う場合には、民事訴訟法上再審被告の審尋を行わなければなりませんし、その前提として訴状を再審被告に送達せざるを得ませんが、再審の訴え却下決定や再審請求棄却決定を行う場合であれば、再審被告の審尋も行う必要がなく、その場合には裁判所は訴状の再審被告への送達もせずに決定し、再審被告には決定も送達しないという扱いをしているのではないかと思われます。
 教科書類や論文上は、訴状は再審被告に送達する(民事訴訟法の規定上は民事訴訟法第341条で「再審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、各審級における訴訟手続に関する規定を準用する。」とされていますから、当然、そうすべきことになります)と書かれています(例えば、1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版423ページは「再審裁判所による再審の適法性の審理終了後、再審訴状副本を再審被告に送達しなければならない」としています)。しかし、再審事由が明らかに存在しない場合についても、民事訴訟法第140条に準じて訴状を被告に送達することなく棄却決定をする実務が存在しているという記述も見られます(コンメンタール民事訴訟法Z 65ページ:民事訴訟法第140条は被告に訴状を送達しなくてもよいとしているわけではないと思いますが)。

 私に再審の相談をしたい方は、「再審メール相談」のページをお読みください。

 再審については「再審請求の話(民事裁判)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる「再審請求」でも説明しています。

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