◆短くわかる民事裁判◆
有罪判決要件と控訴・上告対応
民事訴訟法第338条第1項但し書きは、再審事由がある場合でも、「当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったとき」は再審請求をすることができないことを定めています。これを裁判・民事訴訟法業界では、「再審の補充性」などと呼んでいます。判決確定前に主張した場合や主張できた(のにしなかった)場合は、そこで(確定前の時点で)決着すべきだったということですね。
そして民事訴訟法第338条第2項は、4号〜7号の再審事由については、「罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」と定めています。これを裁判・民事訴訟法業界では「有罪判決要件」などと呼んでいます。
4号〜7号の再審事由について、例えば控訴や上告で判決の認定に用いられた書証が偽造であるとか、証言が偽証であると主張していたり、偽造や偽証があると認識していた(思っていた)が主張しなかったけれども、その時点では有罪判決要件を満たしておらず、その後に(判決確定後に)有罪要件を満たしたという場合、再審請求は可能でしょうか。
最高裁1972年5月30日第三小法廷判決は、「民訴法420条1項6号および7号に該当する事由が再審事由として主張されている場合、同条1項但書によつて再審の訴が許されないのは、旧訴訟における上訴により、右再審の事由のみならず、同条2項の再審の訴の適法要件が主張され、もしくは、かかる要件の存在することを知りながら主張されなかつた場合に限られるものと解するのが相当である。」と判示しました。
したがって、確定判決前には有罪判決要件が満たされておらず、または有罪判決要件が満たされたことを知らずに、控訴や上告で4号〜7号の再審事由に当たる主張(判決の証拠となった書証が偽造であるとか、偽証された証言が判決の証拠となったとか)をしたり、あるいは4号〜7号再審事由があると考えながら主張しなかったり控訴・上告をしなかった場合でも、それで民事訴訟法第338条第1項但し書きによって再審請求ができなくなるということはなく、後日有罪判決要件が満たされてから、あるいはそれを知ってから、再審請求をすることができます。
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