◆短くわかる民事裁判◆
有罪判決要件と再審期間
民事訴訟法第342条第1項は「再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならない。」と定め、第2項は「判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から5年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。」と定めています。これは裁判・民事訴訟法業界では「再審期間(さいしんきかん)」と呼ばれています(1項の方は「出訴期間(しゅっそきかん)」、2項の方は「除斥期間(じょせききかん)」とも呼ばれています)。控訴が可能な期間を控訴期間と呼ぶのと同じようなものですね。
さて、有罪判決要件(罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる:民事訴訟法第338条第2項)が課せられている4号〜7号の再審事由の場合、この再審期間の起算点となる「再審の事由を知った日」、「その事由が発生した日」はいつになるでしょうか。
最高裁1972年5月30日第三小法廷判決は、「原審の確定するところによれば、被上告人が右有罪判決の確定を知つたのは同月20日頃であるというのであるから、それから30日以内である昭和39年1月16日に提起された本件再審の訴は、民訴法424条1項所定の不変期間経過前に提起されたものというべきである。」と判示し、民事訴訟法第342条(判決当時の条項では第424条)1項の30日の起算点は有罪判決の確定を知った日であるとしています。同判決は「民訴法424条4項にいう『再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキ』とは、同法424条1項8号の場合に限定されるべきではなく、同条1項6号および7号の場合であつても、これらにつき同条2項の要件が判決確定後に充足されたときをも含むと解するのが相当である。けだし、文理上右のように解することに支障はなく、また右のように解さなければ、判決確定から5年以上経過した後、はじめて、刑事の有罪判決が確定するような場合には、再審の訴を事実上否定することとなり、再審の訴を提起しようとする者にとつて著しく酷な結果となるからである。」として民事訴訟法第342条第2項の5年の起算点についても判決確定より後に有罪判決要件が満たされた場合には有罪判決要件が満たされたときであるとしています。
※8号再審事由(判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。)が特に挙げられているのは、再審事由はもともと判決時点までにあるのが当然で、8号再審事由だけが確定判決後の「変更」が問題となっているために判決確定後に再審事由が生じたときというのは8号再審事由のみを指していると見る余地があるからでしょう。
有罪判決要件が満たされる場合は、むしろ判決確定よりも後であることの方がふつうと考えられます。ですから、再審期間に関しては、4号〜7号再審事由の場合、厳しいハードルではないことが多いと思います。
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