◆短くわかる民事裁判◆
建物明渡請求:使用方法違反
賃貸借契約書には、通常、建物使用の目的という記載があり、通常、居住用とか事務所、店舗等の記載をします。居住用の場合、居住者を契約書上特定する場合がよくみられます。また特約などで使用方法について制限がある場合があります。近年では、ペットの飼育禁止などが記載されているものがよくみられます。
これらの契約書の規定に違反した場合、家主が契約違反だということで契約を解除して借主に明渡請求をするということがあります。その場合には、どうなるでしょうか。
この場合、契約の経緯、契約違反とされる行為の実情・程度、建物への汚染・損傷の有無・程度、周辺住民への影響や周辺住民からの苦情の有無・程度などを考慮して、ケースごとに考えていくことになると思います。
住居用の賃貸借で、暴力団の組事務所として利用されたとか新興宗教団体の道場として利用されたというような場合は、家主の解除の主張が認められることになるでしょう。
住居用の賃貸借で、法人の登記簿上の本店としているというような場合、現実の利用状況、人や車の出入りやそれによる近隣からの苦情の有無等を考慮し、名目上登記簿上だけの本店のような場合には、家主の解除の主張は認められないと思います。
賃借人が賃借物件を別の人に転貸(てんたい:又貸し)していることは契約解除理由になります(民法第612条)が、転貸の相手が賃借人と親族関係等特殊な関係があり利用の実態に大きな変化がないとか、転貸しているのが建物のごく一部であるような場合、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があると解されて、解除が無効となることがあります。
ペット飼育禁止条項違反については、飼育禁止条項があることに加えて、建物の汚損、悪臭、鳴き声、それによる近隣の迷惑・苦情といった事情があれば、家主の解除・立退き請求が有効とされるケースが多く、それらの程度が高いときは、特にペット飼育禁止条項がなくても家主の解除や契約更新拒絶が有効とされることがあります。
賃貸建物の使用法違反を理由とする立退き請求の場合は、契約条項の有効性(ペット飼育禁止条項でもその経緯や禁止の範囲によっては有効性を争う場合が出てくるでしょう)、違反の有無・程度、違反行為による建物や周辺住民への影響・苦情の程度などが裁判上問題となるというパターンが多いと考えられます。
建物明渡請求についてはモバイル新館の 「民事裁判では何が問題になるか」でも説明しています。
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