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【上告と上告受理申立】
 上告審では、裁判所が上告に理由がないと考えるときは口頭弁論を開かなくてよいことになっているため、控訴審以上に、上告理由書で裁判官に原判決に誤りがある、破棄する必要があると考えさせられるかにかかっています。
 上告ができる理由は、上告裁判所が高等裁判所の場合は、憲法違反と特定の手続上の違反があるときの他に判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることです。上告裁判所が最高裁判所の場合は、上告理由は憲法違反と特定の手続上の違反だけで、その代わりに判例違反と法令の解釈に関する重要な事項を含むときに上告受理申立という最高裁独特の手続きがあります。

《上告・上告受理申立の手続》
 上告・上告受理申立の期限は原判決(控訴審判決)の判決書を受け取った日の翌日から2週間です。受け取った日の2週間後の受け取った曜日になります。受け取った日が月曜日なら2週間後の月曜日が上告・上告受理申立期限です。
 上告・上告受理申立は、上告審裁判所宛の「上告状(じょうこくじょう)」「上告受理申立書」を控訴審裁判所に提出して行います。上告状、上告受理申立書には、当事者の住所、氏名、原判決の表示(裁判所、事件番号、判決言い渡し日、主文)、上告・上告受理申立の範囲(全部なら全部、一部なら一部。一部勝訴の場合、「上告人敗訴部分につき」などとするのが普通です)を記載しなければなりません。上告・上告受理申立の理由は、上告状等に書いてもかまいませんが、書く必要はなく、普通は書きません。最高裁判所に上告と上告受理申立を同時に行う場合、1通の書面(上告状兼上告受理申立書)で行うことができます。

《上告理由書・上告受理申立理由書》
 上告理由・上告受理申立理由は、上告理由書・上告受理申立理由書に書いて提出するのが普通です。
 上告理由書・上告受理申立理由書の提出期限は、上告審裁判所から上告提起通知書・上告受理申立通知書が送られてきた日の翌日から50日です。控訴の場合と違って、上告した日からではありません(といっても、上告した日から通知書が送られてくるまでの間はせいぜい数日ですが)。通知書が送られてきた日の7週間後の次の曜日になります。通知書が送られてきた日が月曜日なら、上告理由書・上告受理申立理由書の提出期限は7週間後の火曜日です。
 上告理由書・上告受理申立書の場合は、控訴理由書と違って、提出期限を過ぎると控訴審裁判所が自動的に上告・上告受理申立を却下することになっています。提出期限は裁判所が認めれば延長も可能ではありますが、よほどの事件でなければ延長してくれません。

提出期限の延長はどの裁判所が判断するんだい?
規定はないけど、六ヶ所村低レベル放射性廃棄物処分場の裁判では仙台高裁が延長決定をしたから、控訴審裁判所でしょう。

《最高裁での審理の実情》
 最高裁は、日本に1つしかなく、3つの部(小法廷)に分かれていますが、3つの部15人の裁判官ですべての事件を担当します。そこに年間数千件の上告や上告受理申立がなされるわけです。
 上告事件、上告受理申立事件には、機械的に担当調査官と主任裁判官が割り当てられます。まず調査官が上告理由書、上告受理申立理由書を読んで事件を持ち回り審議事件と審議室審議事件に分類します。
 事件の大半は、持ち回り審議事件とされて、調査官報告書と1審・2審判決、上告理由書・上告受理申立理由書等をセットにして、順次その事件を担当する小法廷の裁判官に回覧され、異論がなければ審議を終了し、その時点で上告棄却・不受理となります。この場合、最初に主任裁判官が検討し、その後他の裁判官が検討します。その過程で主任裁判官や別の裁判官から異論が出されて審議室事件にした方がよいとなれば、審議室審議事件になりますが、そういうことは極めて少ないということです。
 審議室審議事件の場合、比較的詳細な調査官報告書が出され、各裁判官が事前に調査官報告書や上告理由書・上告受理申立理由書等を検討した上で、原則として週1回その小法廷の裁判官が一堂に会して開かれる審議の場で各裁判官が意見を述べ、議論することになります。
(以上は、滝井繁男「最高裁判所は変わったか」19〜23ページによっています)

《ほとんどの事件は上告棄却》
 最高裁では、上告を棄却する(控訴審判決通り。上告した側の全面敗訴)ときには、口頭弁論を開く必要がありません。もちろん、上告を棄却する場合でも最高裁側で口頭弁論を開くのは自由ですが、忙しい最高裁としては、法律上必要でないときに口頭弁論を開くことはまずありません(ただし、絶対ないとは言えず、ごくまれに口頭弁論を開きながら上告棄却ということもあります)。
 ですから、最高裁の場合、口頭弁論を開くという指定があれば、控訴審判決は何らかの変更がなされるのが通常で、そうでなく判決なり決定が来れば、中身は見るまでもなく上告棄却・上告不受理です。
 そして、最高裁の事件の大半は、口頭弁論が開かれることなく上告棄却・上告不受理となります。上告棄却の判決・決定も大抵理由は書かれておらず(適法な上告理由に該当しないと書かれているだけ)、上告不受理の決定には理由は書かれません。
 ただし、その判決・決定がいつ来るかは、口頭弁論が開かれなければ予告されず、時期は予測できません。はっきりいって何でもない事件が何年も寝かされたり、それなりに理由があると考えられる事件でもあっという間に棄却されたりします。

まだ最高裁がある!って最高裁で逆転無罪になったケースもありますよね。
それは事実ですが、かなりのレアケースで、その言葉は期待を持たせすぎる感じです。

《上告・上告受理が認められるとき》
 他方、上告受理申立が受理される場合は、上告審として受理するという決定がなされます。現実的には、最高裁が上告受理をするときは、多くは控訴審判決が見直されるときですから、口頭弁論も開かれることになります。その場合、受理決定があり、その後口頭弁論期日が開かれ、判決期日が指定されて判決という手順になります。
 上告受理をするけれども、口頭弁論を開かずに判決がなされることもあるようです。その場合、上告受理決定があり、判決期日が連絡されます。こういうときは、控訴審判決の結論(主文)はそのままですが、理由部分について見直しがなされ、最高裁の判断が示されることになります。
 上告が認められる場合は、上告については「受理決定」はありませんので、口頭弁論期日が開かれて、判決期日が指定されて判決という流れになります。

《口頭弁論の実情》
 2012年3月30日、プロミス相手の過払い金返還請求事件で、私にとっては民事裁判では初めて最高裁で口頭弁論を行いました。その事例で、口頭弁論が行われる場合の段取りを説明してみましょう。
 最高裁が口頭弁論を開くことを決めると、まず書記官から連絡があり、期日の日程調整をします。日程が決まったところで、口頭弁論期日呼出状が送られてきます。上告受理の場合は、それと同時に上告受理決定調書が送られてきます。上告受理決定調書には、主文として「本件を上告審として受理する」と記載され、多くの場合、上告受理申立理由書のうち特定の項目以外を「排除する」と記載されます。排除されなかった部分が最高裁での審理の対象となり、最高裁がその排除されなかった申立理由を採用するか、少なくともその部分で原判決を変更しようとしているということを読み取ることができます。
 相手方(被上告人)に対しては、答弁書を提出するように最高裁から催告がなされます。
 答弁書が出され、口頭弁論期日が近づくと、書記官から弁論の時間について調整がなされます。事件の性質にもよりますが、一般の民事事件では、最高裁側は10分程度を想定しているようです。当事者がもっと時間を欲しいといっても値切られます。
 最高裁は、口頭弁論で述べる内容を予め書面にして口頭弁論期日の1週間前までに提出するように求めます。この書類を「弁論要旨」と呼んでいます(法律の規定はありませんが)。そして、それをチェックして、「品位に欠ける」点があると、調査官が、不適切なので差し替えるように求めてきます。プロミス相手の事件で、私が、実際には過払いなのに当事者を切り替えることで過払いでないかのように騙して取立をするプロミスらの手口について、弁論要旨で「被上告人らのような社会悪というべき連中の不法なビジネス」と書いたら、調査官から最高裁の法廷でそのような品位のないことを述べてはならない、弁論要旨を差し替えるようにと電話が来ました。
 このように、最高裁での口頭弁論は、予め、書記官や調査官が、発言をする順番と時間、さらには内容まで確認して、ハプニングがなく予定通りにつつがなく行われるように調整しています。最高裁裁判官経験者が書いた本で、最高裁での弁論はつまらないと嘆いているのを見た覚えがありますが、裁判官の目に触れる前に何から何まで事務方で縛っていることにも、その原因があるように、私には思えました。 

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