◆弁護士の仕事◆
いつ、何回面会する?
面会をどういう頻度でいつするかは弁護士にとって悩ましい問題です
被疑者が基本的に争っていない事件では、多くの弁護士は起訴前の期間(約20日間)で3回程度と考えているようです。私の知人の弁護士は、話を聞くとそのあたりですし、かつての法律扶助協会の被疑者援助制度の標準額の支払の説明も3回程度の面会を想定していました。
私は、自分が起訴前弁護を受けた場合の自分に対するノルマとして20日間に6回の面会を課しています(できないときもありますが)。私の考えでは、初回の面会は1時間程度事情を聞いて事実を把握し、関係者の連絡先を聞き、とりあえずの取り調べへの方針をアドヴァイスして帰ってきます。連絡すべき関係者がいるときは電話等をして話します。近いところで2回目の面会をして事実関係をさらに詳しく聞きます。関係者から得た情報があれば被疑者に確認します。それから勾留状謄本が来た段階で3回目の面会をして被疑者の話とのズレを確認します。おおむねここまでで事実関係を把握して基本的な弁護方針を固めます。この段階で、私の場合は、検察官との面会を入れることが多いです。その後は、事件の流れと自分の日程をにらみつつ捜査の節目の時期を考えて面会に行き、被疑者から取り調べの状況を聞き、次の取り調べへの対応をアドヴァイスします。私は最初の1週間で3回、残りの2週間弱で3回というのがいいと思っています。面会時間は状況によって異なりますが、2回目以降は30分程度が多くなります。
はっきり言って、弁護士にとって20日間で6回の面会は厳しいです。日本の弁護士は通常民事事件を数十件抱えながらやっていますから、その合間を縫って面会の時間を作るのは大変です。面会は会う時間だけではありません。警察署までの往復時間、そして1つしか面会室のない警察署が多いため他の人が面会しているとそれが終わるまで待たされたりします。それで、面会時間が30分でも弁護士はそのために2時間とか悪くすると3時間も取られるのです(私はその間趣味の読書に励みますけど)。私はこれまで2回だけ3件の被疑者弁護を同時並行したことがありますが、2回とも、起訴前弁護が全部(3人とも)終わったところで寝込みました。
伝言のために呼ばれるのはつらい
弁護士にとって、被疑者本人や家族が弁護士をメッセンジャーと考えて伝言のために今日会ってくれなどと言ってくるのはとてもつらいです。ドラマや映画では弁護士はその1件だけに専念しています(ドラマや映画は誤解に基づくか、そういう設定にしないとストーリーがぐちゃぐちゃになるからそうしているのです)ので、そういう誤解をしている被疑者や家族が時々いるのが悩みの種です。
タイミングは難しい
面会のタイミングは、判断が難しいというか、偶然に左右されます。予定していなかったけどたまたま時間が作れたので会いに行ったら、前の面会から大きく情勢が動いていて、しかも翌日検察官調べが入っていて、来てよかったと胸をなで下ろすこともあります。でも、行っても前の面会から何の変化もなく取り調べも一度もなくて、ほとんど話すこともなく世間話をして帰ってくることもあります。被疑者段階の面会の価値は、行ってみなければわからないところが、どうしても残ります。
【弁護士の仕事の刑事事件関係の記事をお読みいただく上での注意】
私は2007年5月以降基本的には刑事事件を受けていません。その後のことについても若干のフォローをしている場合もありますが、基本的には2007年5月までの私の経験に基づいて当時の実務を書いたものです。現在の刑事裁判実務で重要な事件で行われている裁判員裁判や、そのための公判前整理手続、また被害者参加制度などは、私自身まったく経験していないのでまったく触れていません。
また、2007年5月以前の刑事裁判実務としても、地方によって実務の実情が異なることもありますし、もちろん、刑事事件や弁護のあり方は事件ごとに異なる事情に応じて変わりますし、私が担当した事件についても私の対応がベストであったとは限りません。
そういう限界のあるものとしてお読みください。
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