私の読書日記 2006年6月
28.がんと一緒にゆっくりと 絵門ゆう子 新潮文庫
乳癌を告知された著者が、母の乳癌の時の治療の体験と最初に告知した医師の対応への反感から西洋医学を拒否して怪しげな民間療法を渡り歩き、癌が全身に転移し骨転移で脆くなった首の骨折で瀕死の状態で入院し、著者を受け入れてくれる医師と出会って西洋医学を受け入れていくまでの経緯を綴った手記。無責任に「治る」と断言し、手に負えなくなると他人のせいにしたり見放していく民間療法の先生たちは、弁護士の目からは、悪徳商法や新興宗教団体の霊感商法と同じように見えます。と同時に、著者を西洋医学不信に追いやった医師の対応には、弁護士の業界にも同じ体質が・・・自分自身、相談者から同じ気持ちを持たれたことが絶対ないとは思いませんし、考えさせられます。癌への恐怖から癌との共存へと気持ちを切り替えていく著者の姿勢には共感を覚えます。
27.ギリシャ神話入門 吉田敦彦 角川選書
ギリシャ悲劇の中で描かれるプロメテウスとオイディプス像と当時のアテネの置かれた社会情勢の関係を論じた本。ヘシオドスの叙事詩ではプロメテウスの行為は全てゼウスが見通していてゼウスは騙されたふりをしながら全てゼウスの予定通りにことが進んだとされているのに対して、アイスキュロス劇ではプロメテウスが優位に立ち、ゼウスが妥協してプロメテウスと和解しているそうです。この変化は、全く勝ち目がないから逃げよというデルポイの神託を覆してペルシャ戦争で奇跡の大勝利を得たアテネの人々に、プロメテウスに象徴されるような知恵と勇気と忍耐を尽くせば運命を神意の定めたものから変えることができるという自信が生じたことの反映と著者は結論づけています。そしてソポクレス劇に描かれるオイディプスの人間の業と性(さが)は、ペロポネソス戦争と疫病の流行で追い込まれ倫理観を喪失し勇気を失い絶望したアテネの状況を反映しているそうです。そのあたりを論じた第2章から第4章は、なかなか興味深く読めました。ただその前提として延々と説明されている第1章のヘシオドスの叙事詩は、やりたい放題のわがままなゼウスの絶対性が強調されている(これはギリシャ神話を読む度に思いますけど)のと、パンドラの記述が今時では信じられないほどの女性蔑視(犬の心と盗人の性を本質とする)に満ちていて、読むのが苦痛でした。「ギリシャ神話入門」なんてタイトルを信じて読み始めた読者の大半は第1章の途中で挫折するんじゃないでしょうか。
26.シェバの女王 蔀勇造 山川出版社
「シバの女王」(ヘブライ語ではシェバ、英語ではシーバ、アラビア語ではサバァだそうです)の伝説が各地でどのようにつくられ、変化していったかについての解説です。歴史学者の間でも、著者自身も、シバの女王が実際に存在したことについては否定的だそうで、この本は、あくまでも神話というか伝説がどのように作られるかの研究だそうです。私たちはシバの女王といえば南イエメンの古代王朝だと習いましたが、エチオピアにいたという説もあって、エチオピアでは強く信じられているというのは知りませんでした。ただ、この本、前振りや脱線が長くて、シバの女王以外のことを書いている部分が多く、ちょっと読み通すのがしんどいです。
25.グー・ジャーミンのレディース・バドミントン グー・ジャーミン ベースボール・マガジン社
元中国ナショナルチーム所属の世界チャンピオンが40代になって中年女性のために書いたバドミントンの教則本です。中年女性用を意識していますけど、肩胛骨や股関節が大事とか、インタビューで「カラダは年齢ではなく、使わなくなったから動かなくなったのだ」とか、頷かされるところが結構ありました。趣味でバドミントンを楽しんでいる人のためにというわりには練習方法の解説が多すぎる感じもしますが。
24.RENE MAGRITTE ルネ・パスロン 河出書房新社
ルネ・マグリットの画集。シュールレアリズムの画家の画集で、それも1973年に出版されたものの増補新版だけあって、付いている解説は難解です。ほとんど無視して絵だけ見ました。解説よりも冒頭にある妻のインタビューが興味深いです。マグリットはマイホーム主義者で探偵小説が好きだったとか。題名はいつも絵を描いた後から付けたし、友達が題を付けてくれることもあった、題名はイメージの説明ではなく絵と一体になった詩的要素だそうです。あまり題名にこだわって見る必要はなさそうですね。かの有名な鳩型の青空がなぜ「大家族」なのかとか、岩が宙に浮いているのがなぜ「ピレネーの城」なのかとか・・・
23.水彩画 これであなたは上手くなる 北条章 学習研究社
屋外での水彩画の描き方の解説。屋外で書くということもあって、天候や旅先での時間や光の変化などのためゆっくりと書けないという制約からだと思いますけど、普通とは違った描き方が示されています。中心となるところからまず書き込む、それ以外のところは鉛筆でのデッサンも後回しにする、車は先に描いてしまう(いつ持ち主が動かしてしまうかわからないから)、一番暗いところを先に描くとか。ちょっと、へ〜っと感心してしまいました。こういう本読むとスケッチ旅行とかしたくなりますね。引退したらそうしよう・・・
22.絵の教室 安野光雅 中公新書
NHKの人間講座「絵とイマジネーション」をベースに新書にしたものだそうです。遠近法や写実主義について解説しているのですが、結局は遠近法の技法や写実にこだわると絵としておもしろくないですよと言っています。むしろ目に見えないものを書くということが、難しいけど、大切なんですよって。でも、そこでゴッホへの敬愛が語られているのはちょっと意外でした。著者の絵の傾向とはかなり違いますから。そういうものかなって気もしますけど。
21.モナ・リザの罠 西岡文彦 講談社現代新書
「ヴィーナスの誕生」に続いて、今度は「モナ・リザ」のうんちく本です。時節柄、「ダ・ビンチ・コード」にも言及、いわくモナ(Mona)は英語で、イタリア語ではMonna。ダ・ビンチが英語でMonaと綴るはずがない上に、当時は絵の題名を画家が名付けることはなかったと、「ダ・ビンチ・コード」の前提を崩壊させる指摘も(念のため、私は、「ダ・ビンチ・コード」は読んでませんので真偽の程はわかりません)。これまでのモナ・リザ研究は、ダ・ビンチをホラー画家(むしろB級スプラッター画家というべきか)と誤解したジョルジョ・ヴァザーリ(16世紀)の記録とそれに基づくウォルター・ペイター(19世紀)のモナ・リザ論に引きずられたものだそうです。著者は、それとは別の観点からうんちくを傾けていますが、やっぱり絵はもう少し肩の力を抜いて楽しんだ方が・・・
20.「ヴィーナスの誕生」視覚文化への招待 岡田温司 みすず書房
絵画を絵に込められた精神的・観念的意味の解明(図像解釈学:イコノロジー)を重視するのではなく、絵そのものをもっと楽しみましょうということを、ボッティテェッリの「ヴィーナスの誕生」を題材に語る本。といっても、著者もかなり衒学趣味的にいろいろな解釈をして、宗教的・道徳的教訓ではなく、当時のフィレンツェの祝祭文化やカーニバル的な(非日常的な)「逆転」としての女性の力の象徴、+エロティックな娯楽を読み込むことを論じています。絵の楽しみ方についての学者間の論争とも読めます。著者のいうところよりはもっと力を抜いたところで眺めた方が絵は楽しめると思いますが。
19.バースディ・ラブレター エドワード・ホフマン 講談社
最初の方は、タイトル通り、誕生日に絡めて愛する人に宛てた手紙が配置されています。ほのぼのした気持ちでホッとします。でも、タイトル通りなのは最初の方だけで、親や子ども、友人宛の手紙ばかりになっていき、最後は手紙でさえないエッセイ的なものが並んでいます。で、原題を見たら
The Book of Birthday Wishes (誕生日の願いの本)です。原題ではラブレターはもちろん、レターでさえありません。原題は内容とフィットしているのに日本語タイトルが内容とフィットしていないことって、時々ありますけど、出版社の姿勢を疑いますね。内容は特に悪くはないです(特によくもないです)が、看板に偽りありで、後半はだんだん嫌気がさしつつ読みました。
18.旅する前の「世界遺産」 佐滝剛弘 文春新書
世界遺産の一般教養というか、どちらかというと著者の旅行歴を中心としつつマイナーな世界遺産を紹介している本。なんとなく予想していたことではありますが、世界遺産への関心は、他の国に比べて日本で高いそうです。権威に弱く、お墨付き・目標達成型(というかガイドブックの通りと確認する旅行)が好きな人が多いからとか。
17.図解雑学 建築のしくみ 齊藤祐子 ナツメ社
初心者向けの教養としての建築一般の解説本。絵が多いので建築用語がイメージでわかって助かりました。
16.内部通報システムをつくろう 中原健夫、結城大輔 きんざい
企業側の弁護士が企業に向けて内部通報システムをつくりましょうという啓蒙書です。弁護士会でも2006年4月施行の公益通報者保護法の関係で支援相談の枠組みを作るお勉強として読みました。基本的に建前を語り理想を語っているのですが、内部通報システムをつくることで、行政やマスコミへの内部告発を避けるという点で企業にインセンティブを与えようという姿勢があらわなのには、庶民の弁護士としては反発を感じました。ずっときれいごとを書いてきて最後に、内部告発は組織内部の情報・秘密を外部に暴露するものであり本来懲戒処分の対象だとして、内部通報システムを整備するメリットとして「公益通報者保護法に違反しない限り、内部告発により組織の秩序を乱したことを理由とした懲戒処分等を実施できる」ことを挙げている(207〜209頁)のには、正体見たりって感じですね。抽象論に終始している第2章(具体的対策を挙げたって書いてありますけど、どう見ても具体的にイメージできません)を読み進むのは苦痛でした。第3章に入って判例と説例が出てぐっと読みやすくなりました。具体例を挙げることの大切さを実感します。
15.天の川の真実 奥田治之、祖父江義明、小山勝二 誠文堂新光社
電波・X線・赤外線天文学の最近の知識による天の川銀河(銀河系)の中心部についての解説書です。私は、高校生の頃、地学が好きで、一時は場合によったら天文台にでも・・・なんて考えた時期もありますので、興味のある分野なんです。でも可視光での観測でなくて電波望遠鏡とかの話は、ちょっと何かイメージしにくいですね。「記述はできるだけ平易な言葉を使うよう心がけた」って「はじめに」には書いてあるけど、嘘でしょうって思いますし。最新の話が盛り込んであるので、え〜本当と、半分ワクワク半分まゆつばみたいな読み方してしまいました。それはそれで、読書としては楽しいですけど。
14.アクセントの法則 窪園晴夫 岩波科学ライブラリー
日本語の標準語・大阪弁と鹿児島弁のアクセントについての解説書です。著者の関心は標準語と鹿児島弁の比較の方にあるんですが、それよりも標準語(東京弁)と大阪弁のアクセントが、実は、大半の語で同じという指摘、それから英語のアクセントのパターンもほとんど同じという指摘には、ちょっとカルチャーショックを受けました。学生の頃、大阪弁のディープなネイティブスピーカーが英語を読むのを聞いて、英語も大阪弁に聞こえると感心した覚えがあるんですが・・・
13.日銀はだれのものか 中原伸之 中央公論新社
1998年4月〜2002年3月に日銀政策委員会審議委員だった著者の日銀の体質・金融政策についての回想+意見。タイトルからして予想できるように、日銀の総裁や事務局にかなり辛辣です。日銀の体質について、「1つは事態が悪化しないようならば何もやりたくないというもので、もう1つは事態が悪化すると、それまで展開してきた理論をかなぐり捨てて大変身をする点です。この体質は今も変わらないのではないでしょうか。日銀が大変身して打つ場合の政策にも特徴があります。1つは新たに採用する政策は、これまでの主張と断絶していることで、もう1つはその政策は最小限度にとどめることです。」(208〜209頁)「日銀は、外部から注文を突きつけられたり、批判の矢面に立たされると、『自分たちは(政府に比べて)弱い』『真面目にやっている』『あまりいじめないでほしい』などと甘えの姿勢をとりがちなところがあるように思えます。その一方で、議論で対立すると、『我々こそが金融政策の専門家である。素人は黙っていろ』と言わんばかりの”驕り”の気持ちを見せるような時もあります。」(212〜213頁)とか。著者は石油業界の人で日銀でもゼロ金利、量的緩和、インフレ・ターゲットを主張、企業利益を体現していた人ですから、私は著者の意見は支持しませんし、著者が守秘義務等に引っ張られて書いていないところもありますし、文章もわかりやすくはありません。でも日銀内部の様子や、その批判がけっこうあけすけに書かれている点は興味深く読めました。
12.疾走12年 アサノ知事の改革白書 浅野史郎 岩波書店
前宮城県知事の回想録。テーマからして宮城県の食糧費問題の情報公開を扱った第2章と県警の犯罪捜査報償費問題(での知事と県警の戦い)を扱った第8章が興味深いですが、それ以外も全般に軽めのタッチでおもしろく読めました。著者の専門領域の福祉問題を扱う第6章と三位一体改革関係の第7章はちょっと重たい文章になっていますけど。
11.カラフル 森絵都 理論社
罪を犯して死んだ魂に、天使が、別の自殺者の体に「ホームステイ」して修行し合格するとまた生まれ変われるという再挑戦をさせるというアイディアの青春小説。別の人としてってところがミソで、他人事だから自殺者を取り囲む深刻な悩みもある程度客観視できるわけです。最初は自殺者の目で周囲の家族や知人を真っ黒な悪者と思いこんでいた主人公が、次第に家族や知人のいいところにも気づきます。といって全くいい人ってわけでもなくて、人間、黒とか白とかで割り切れないねってことで「カラフル」というタイトルが付けられています。黒でも白でもないのが「グレー」にならずに「カラフル」になるところに作者のセンスのよさを感じます。いじめとか援助交際とか不倫とかけっこう深刻なテーマを扱っているんですけど、「他人事」ってフィルターと「カラフル」ってセンスがどこかコミカルに読ませてくれます。落ちは、ある程度見えるところに落ち着くのですが、まあそのあたりは、読後感をよくするにはこれしかないでしょうねってところですね。
10.実践・変化する雇用社会と法 菅野和夫・安西愈・野川忍編 有斐閣
労働事件をやっている弁護士としては、お勉強と読み物をかねての読書です。最近の時代の変化を反映した新しい労働問題の説例が多く、労働相談にはとても参考になりそうです。編者も、裁判官への影響力抜群の菅野先生(元東大教授)らですし、個々の執筆は他の人達ですが、「内容については、全て編者が責任を負うべきものと考えている」(はしがき)そうですから、裁判官説得にも使えるかも。ただ、整理解雇関係の説例が多数あるのですが、場所によって解雇が有効かどうかの判断に少しぶれがある感じがするのがちょっと気になりましたけど。業界以外の人には、読み通すのはちょっと辛そう。
09.キーパー (Keeper) マル・ピート 評論社
不慮の死を迎えた往年の名選手の亡霊と世界の頂点に立つキーパーが織りなすファンタジー。最初から最後までサッカーの話ですが、ブラジルの貧しい木こりたちの姿や森林(ジャングル)の伐採・破壊も背景となっています。基本的には、ワールド・カップシーズン向けの軽く読めるサッカーファンタジーとして、その時期を狙って翻訳出版されたものとして、読めばいいでしょう。
08.99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 竹内薫 光文社新書
常識となっていることがらも、いつ単なる仮説とか誤りとされるかもわからないということを、最初から最後まで書き続けている本。科学の世界では完全な証明は不可能だけど、常に反証の可能性はある、それが科学だという態度です。それはそれでいいんですが、全てのことがらについて完全には信用できないとして相対化したら、逆にうさんくさいものも、世間で信頼されているものと同列に思えてきて、それがうさんくさい新興宗教団体への入信につながったりもするんですよね。もちろん、この本がそういう意図で書かれているわけじゃないですけど。
07.ビューティフル・ゲーム 世界レベルのサッカーを科学する ケン・ブレイ NHK出版
サッカーのフォーメーションやフリーキック、PK戦等のテクニックについて科学の立場から検討した読み物。ワールド・カップ前の教養付けに読みました。難しい数式とかはなくて、フリーキックの時の壁の作り方の目安とか、キーパーが飛び出すときの目安とかは、なかなか興味深く読みました。フリーキックとスピンの関係つまりバナナシュートの原理というか蹴り方とか、今度子どもと練習してみようと思います。
06.ノアの徴 新井政彦 光文社
心理学者がチャットレディ連続殺人事件を犯すミステリー。最初から犯人は明かされていて、犯人がどう追いつめられていくかで展開するものなので、安心して犯人を書いてしまいます。多重人格やトラウマがキーになっています。書かれていることが心理学的に正しいのかどうかは私には分かりませんが、心理学を駆使した心理学ミステリーとでもいうべき作品です。私は、犯人の妻の心理学者が同い年なもんで、そっちの方に同情しながら読んでしまいましたけど。ただ、小学4年の時の性的な体験が犯人の中にモンスターを育み、30代になってもそれを抑えられずに連続殺人を生むという筋立てには、違和感を持ちます。個人的には、最近小学生時代の同級生と会うことがわりとあって、小学生時代を思い出すもので、こういう話を読むとぞくっとしてしまうのですが。
05.ジャングルの子 幻のファユ族と育った日々 ザビーネ・キューグラー 早川書房
西パプア(ニューギニア島)で外部と接触しないままほぼ石器時代の文化を保ってきたファユ族とともに少女時代をジャングルで過ごした著者の少女時代を中心に描いたノンフィクション。文明論的な観点でも読めますが、私はエンターテインメント系としてお薦めします。私のお薦め本のコーナーで紹介。
04.黄砂 その謎を追う 岩坂泰信 紀伊國屋書店
黄砂の発生源のタクラマカン砂漠(タリム盆地)は、北南西の3方を5000m級の高山に囲まれ、開けている東方から季節に関わりなく内向きの風が吹き、その風と高山斜面での温度の日較差による強い山谷風で常時砂が巻き上げられ、その出口がない状態にあって、上空5kmあたりまで舞い上がった砂が偏西風に乗って遠方まで飛ばされるのだそうな。黄砂は日本付近まで来るうちに硫黄酸化物を吸着し、それによって酸性雨を緩和する働きをしているとか、北西太平洋まで運ばれてプランクトンの栄養源になっているとか、興味深い話が書かれています。著者の研究分野の上空の黄砂サンプルを採集する苦労とかの話も含めて、科学の話が文系の人にもわかりやすく書かれていて、ちょっとした気分転換に教養書を読みたいなと思ったときにいいと思います。
03.プロが教えるリフォーム悪質業者の見分け方 山川義光 週刊住宅新聞社
リフォーム詐欺業者の手口の実例は書いてあるのですが、全体としては正しいリフォームの勧めという感じがしてしまう本です。タイトルにある悪質業者の見分け方になると、結局は素人にはわからないから第三者の管理・検査を入れた方がいいというところに落ち着きますし。リフォームは完成品を買うのではなくて契約後に契約にあわせて行われるし、職人の技と心を買うのだから、安ければいいという考えで契約すると手抜きが待っているという指摘は、同じサービス業としては、わかるともいえるしそうも行かないでしょうともいえるし、ちょっと複雑な気分。
02.インド仏塔紀行 長谷川周 東方出版
インドの釈迦のゆかりの地(8大聖地)といくつかの仏塔の紀行文と写真集ですが、写真集と見た方がよさそうです。サーンチーの仏塔の写真が全体の3分の1を占めていて、それならむしろそれだけで1冊にした方がよかったかも知れません。インドでは(東南アジアでもそうだと思いますけど)釈迦も他の仏神も豊満に描かれているのに、日本では(東アジアでもそうだと思いますが)やせた像になってしまうのは、教えの変化でしょうか、「お国柄」でしょうか。
01.FLUSH カール・ハイアセン 理論社
糞尿を海に垂れ流すカジノ船が許せなくて、そのカジノ船を沈めてしまう「瞬間湯沸かし器」と呼ばれた父親の事件をめぐり、奔走する少年と妹の物語。ミステリーに分類されてましたけど、事件の中身が中身だけに、深刻度は限りなく低く、どちらかというと中高生向けファミリー・アドベンチャーとでも言った方が適切な感じ。「大どろぼうホッツェンプロッツ」(オトフリート・プロイスラー)と「海のはてまで連れてって」(アレックス・シアラー)の中間みたいな・・・って言ってもわかる人は少ないでしょうけど。たわいなく楽しく読めるけど、大人が読むにはちょっと子どもっぽいですね。
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