◆私のお薦め本◆
大丈夫。人は必ず生まれ変われる。
岩井喜代仁著 文藝春秋 2005年
 著者は、元ヤクザで覚せい剤の売人をして自分でも21年間にわたって覚せい剤を使用していたが、その後立ち直って現在は薬物依存社の社会復帰施設(茨城DARC)の責任者をしているそうです。その著者が、自らの経験を元に薬物の恐怖と立ち直りについて語るという本です。
 薬物依存症は、病気で、しかも治ることはない。ただ止め続けられるだけだ。
 薬物を使い続けたら行く先は3つ、刑務所、精神病院、死体置き場。
 友達が薬物を使っていたら絶対止める勇気を持つな。逃げる勇気を持て。
 そのためにも何でも話せる友達を3人以上持て。1人しか友達がいなかったらそいつから逃げられない。
 自分は今でも使いたくて仕方がない。でも仲間がいるから、仲間を裏切れないから止めていられるんだ。
 切実な、心にしみるメッセージですね。
 弁護士の仕事をしていると、懲りない人々というか、やめられない人々というか、どこか「壊れて」しまった人々によく出会います。
 薬物使用を繰り返す人だけじゃなくて、何度も刑務所に行っても出てきたら同じ犯罪を繰り返す人。さらに言えば、刑事事件だけじゃなくて、債務整理してもまた借金を繰り返す人・・・
 弁護士としては、無力感を感じ、溜息をつきますが、そういう人でも、立ち直れるってメッセージは、救われる気がします。ただ、自分の仕事としてそこまでつきあおうとは思いませんが。
 仕事上の興味を別にしても、私は、こういう堕ちて立ち直った人の体験記って好きです。「だから、あなたも生きぬいて」なんかも素直に感動しましたし(別に著者が同業者だからでも、著者と面識があるわけでもないですよ。念のため)。
 ただ、難点をいうと、ちょっと覚せい剤を使うと気持ちいいって言い過ぎてます。きれいごとじゃなく書くとそうなっちゃうんでしょうけど。
 それから、高校生の前での講演の再録をした第1章と自分が堕ちていく体験記の第2章がかなりダブってます。まあ、講演が経験をベースにしている以上同じ話が出てくるのは仕方ないんですけど、第1章で「わあ、すごい」って思って読んでて、第2章に入ると、さっき読んだ話だなあっと思うために少し感動が薄れます。ちょっと構成というか編集で工夫して欲しかったですね。

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