庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」
ここがポイント
 カー・アクションのアイディアとしては第5作の巨大金庫が傑出していたと改めて認識
 敵役のキャラの選択、続編に依存したエンディングには疑問を感じる
    
 派手なカー・アクションで売る「ワイルド・スピード」シリーズ第10作「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」を見てきました。
 公開3日目日曜日、新宿ピカデリーシアター3(287席)午前11時30分の上映は7〜8割の入り。

 かつて「ワイルド・スピード MEGA MAX」(シリーズ第5作:2011年)でドミニク(ヴィン・ディーゼル)らに1億ドルを奪われた麻薬王レイエス(ヨアキム・デ・アルメイダ)の息子ダンテ(ジェイソン・モモア)は、復讐を誓い、ドミニクを苦しめるために愛する者を奪う計画を立てていた。「ワイルド・スピード SKY MISSION」(シリーズ第7作:2015年)以来ドミニクらが指示を受けてきたアメリカ政府の秘密組織からの依頼で仲間たちをローマに派遣したドミニクは、秘密組織はそのような依頼をしていないと聞き、罠だと気づいてローマに急行する。指令に従いラムジー(ナタリー・エマニュエル)らが侵入した輸送車には、目的のチップではなく巨大な球形の爆弾が積まれ、輸送車は遠隔操作されていた。ドミニクらは爆弾を人がいないところで爆発させるが、レティ(ミシェル・ロドリゲス)は現場付近で逮捕されてしまう。ミスター・ノーバディ(カール・ラッセル)亡き後組織を引き継いだエイムス(アラン・リッチソン)は、ドミニクらとの関係の清算を決意し、ドミニクらを爆弾事件の容疑者として指名手配する。ドミニクとレティの留守中、ドミニクの妹ミア(ジョーダナ・ブリュースター)に預けられていたドミニクの息子リトルブライアン(レオ・アベロ・ペリー)は、ダンテに雇われた武装集団に襲われ、助けに現れたジェイコブ(ジョン・シナ)とともに逃走し…というお話。

 この作品の続編(続編が1作か2作かははっきりしませんが)でシリーズが終了することがアナウンスされ、シリーズ最終章とか「最後への道が始まる」(ポスターのキャッチコピー)とされています。これまでわりと/かなりいい加減に作ってきたきらいのある設定を少し整理して説明しようという様子が見られますが、この作品でも敵だったはずの人がいつの間にか味方っぽく振る舞ったり味方のはずの人がいつの間にか敵対したりする感じがして、見ていてなかなかわからない印象が残ります。顔が似ている登場人物を私が判別できていないためかも知れませんが(今回は、公式サイトに「キャラクター」のページがあって、説明は抜きですが、一応ひととおりの登場人物の名前と顔写真、俳優名だけは明示されていて、助かりますが)。
 初期にはワルだったドミニクらが、シリーズの途中からFBIに半ば脅されて渋々協力し、さらに近作ではアメリカ政府の秘密組織と協力して悪役と対決するという設定になってきたのを、回顧して整理しているから、もともと無理があるのですが、「ワイルド・スピード MEGA MAX」で麻薬王から1億ドル入りの金庫を強奪したのは最後の一稼ぎということだったのに、この作品では金は奪ったんじゃない焼き捨てたんだと言っていて、まるでポケットに入れるつもりはなかったように言うのには驚きました。

 この作品の最大の売りのカー・アクションは、「ワイルド・スピード MEGA MAX」の巨大金庫を引きずり振り回すシーンの回顧が繰り返され、その他には転がる球形爆弾を止めにいく、多数の追跡車を撃退する、ヘリコプターを引きずり振り回す、予告編で使われているダムからの落下・降下などが展開され、それらのカー・アクション自体は迫力があり見せ場になっていますが、アイディアとしてはこれまでに出し尽くされている感があって新味はありません。シリーズを閉じるにあたって、実は第5作の巨大金庫を引きずるアクションが一番リアリティのある驚きがあったという評価がなされ、それでその続編と位置づけた構成をしたのかなと思います。
 ただ、敵となるダンテのキャラのおちゃらけぶり、軽みが、最終章として、また続編への観客動員のためにふさわしいかは考えものに思えました。
 また、続編があるとアナウンスされていても、Part1 とされているわけでも続編がすぐに公開されるわけでもない(今のところ2025年公開とアナウンスされているようです)のですから、それなりに区切りをつけて欲しいところです。いかにも「続く」と言って終わっているようなエンディングは、観客に不満を残し、2週目以降の動員に影響するんじゃないかと、他人事ながら心配してしまいます。
(2023.5.21記)

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