◆たぶん週1エッセイ◆
東電の波高計位置訂正発表について
今さら、ではありますが、東京電力というのはどこまでいい加減な連中なのか
もっとも、波高計の位置がその程度ずれても、私と東電の議論の帰趨には影響なし
東電の波高計位置訂正発表
国会事故調報告書と、その後私が福島第一原発1号機の交流電源喪失が津波の敷地遡上前に起きている(したがって、少なくとも1号機の交流電源喪失は津波によるものではない)と主張しているその基礎事実となっている波高計の位置について、東京電力が事故から8年もたって、2019年8月20日に、福島原発沖合1.5km地点に設置されているといっていたのは間違いで、実はもっと近いところ(沖合約1.3km)に設置されていたと発表しました。(東京電力の発表はこちら)
東京電力って…今さらながら、呆れるしかない
この問題に関連して、国会事故調で私が行った調査での東京電力の姿勢には、ほとほと呆れています。
・東京電力が自ら3月11日午後3時42分撮影とキャプションを付けて発表した津波が4号機脇に遡上した写真の撮影時刻は、後になって正しくないことになった。
・運転員がヒアリングで1号機A系の非常用ディーゼル発電機の停止(交流電源喪失)は、B系より1〜2分、長くても2〜3分程度早かったと述べたので、東京電力にそのことを知らせたら、東京電力が再確認したところ運転員はみな「ほぼ同時」といっていることにされた。
・1号機のコンピュータデータ(過渡現象記録装置データ等)は15時17分までの記録しかない、国会事故調に提出したもの以外にはないといっていたのに、国会事故調解散後、15時37分までの「1分周期データ」があったと言い出し、それを国会事故調への反論材料とした。
・津波の連続写真解釈のポイントとなる写真撮影者に対するヒアリングについて、徹底的に拒否の姿勢を貫いている(私が国会事故調で請求したヒアリングで拒否されたのはこれだけ)
(「この問題」じゃないですが、1号機原子炉建屋4階の現地調査を求めたら、原子炉建屋は昼でも真っ暗と嘘を言われ、それでも行こうとしたら東電は案内人を出さない、勝手がわからない真っ暗で床に穴が開いているところに行って帰って来れなくなっても知らないとまでいわれた)
・それでもって、東電が調査の最初から一貫して沖合1.5km地点と説明してきた波高計の位置が、事故から8年もたって、間違ってましただと…
(真っ暗問題のときも、騙される方が悪いみたいなことをいう人がいてびっくりした経験があるので、念のためにコメントしておきますが、波高計はコンクリート製の架台に固定されて海底に設置されていて、海上/海面には何もありませんので、今回東電が実施したように現地で潜水しない限り発見できません。第三者が真実を発見するのはまず無理です)
1号機の電源喪失原因問題の議論への影響
もっとも、私の主張は、現在は「福島原発全交流電源喪失は津波が原因か(その8)」でとりまとめていますが、1号機A系の非常用ディーゼル発電機の停止(交流電源喪失)は、津波の1号機敷地遡上よりも1分以上も前になりますので、波高計の設置位置が従来の前提よりも200m程度敷地に近かったとしても(東電の発表が本当だったとしても)、結論にはまったく影響がありません。
私の立場(立論)からは、東電の発表はたいした影響はなく、ただ東電のいうことって本当に当てにならないよね、信用できない連中だよねって度合いがさらに強まったという以上のことはありません。
東電も、発表で、国会事故調の結論には影響を与えないものと思われると気をつかって言及しているくらいです。
そうは言っても、東電にとっては、その主張通りとしても津波の1号機敷地への遡上は15時36分50秒台で、1号機A系の非常用電源喪失は最も遅くて15時36分59秒です(運転員の証言を考えれば実際は15時36分台としてもその前半と考えるのが自然です)から、とっても苦しい議論だったのが、波高計の位置をずらすことで津波の敷地遡上時刻を10秒程度でも早くできるとたいへん助かるという事情にあります。
この問題をフォローしている方はたぶんご存じと思いますが、新潟県技術委員会で鈴木元衛委員が、東北大学の今村教授の協力を得て、津波の連続写真を東電の主張通りに読んでも、それでもなお1号機敷地への津波の遡上は1号機A系の非常用電源喪失後になるという解析をして、厳しく追及しています。今回の東電の発表でも、鈴木元衛委員の質問がきっかけだとされています。
今回の東電の発表は、1号機の電源喪失原因(津波の敷地遡上時刻)問題で、私のみではなく、鈴木元衛委員と今村教授に、私との議論で仮に東電の主張を採ったとしてもなお1号機A系の非常用電源喪失の原因は津波でない可能性が高いと厳しく追及されて追い込まれたためと思われます。
私の目には、東電が鈴木元衛委員と今村教授の追及をしのぐために苦し紛れにいいだしたと見える今回の発表が今後どう転んでいくか、注目しておきたいと思います。
損害賠償請求集団訴訟でこれまでの集大成的な意見書を作成して提出しました
福島原発全交流電源喪失は津波が原因か(その8)
(2019.8.25記)
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