◆たぶん週1エッセイ◆
映画「レッドクリフPartU」
三国志のクライマックス「赤壁の戦い」を描いた歴史アクション映画「レッドクリフPartU」を見てきました。2008年11月公開の「PartT」の続編です。
封切り2日目土曜日(金曜日封切りのため)は、さすがに8割近い入りでした。
PartTと同様、いきなり日本語で人物関係とかの解説映像があり、吹き替え版に間違って入ったかとドッキリします。
PartUは、長江を挟んで対峙する両軍の心理戦・前哨戦を経て、決戦に至る様子を描いています。
曹操軍80万に対する孫権・劉備連合軍5万の戦いですから、孫権軍の指揮官周瑜(トニー・レオン)と劉備の軍師諸葛孔明(金城武)の知恵を絞っての心理戦・情報戦が見せ場となります。
男装して曹操軍に入り込んだ孫権の妹尚香(ヴィッキー・チャオ)が前半のキーパースンになり、曹操の進軍の目的が自分の略奪にあると聞いて単身長江を渡り曹操の前に乗り込む小喬(リン・チーリン)が後半のキーパースンになっていて、「女たちの勇気」の物語にもなっています。
孔明は、濃霧を利用して10万本の矢を調達したり、風向きの変化とその時刻を予言しますが、これは神懸かりと言うよりは農民の知恵とも言うべき天候の変化を読む知識によるもので、比較的着実な描き方だと思います。そして、尚香を曹操軍内に派遣して伝書鳩で曹操軍の情報を得るなど、堅実な情報戦の実践に努めています。最後のクライマックスに向けての、敵を欺くためにはまず・・・の点も含めて。
他方、曹操軍の水軍指揮官2人の首を取ると約束した周瑜は、曹操(チャン・フォンイー)から奇策は採らず正攻法を採る人物と評価されていながら、十分謀略的。これも情報戦・心理戦としては常道ではありますが。
疫病で死んだ兵の死体を船で連合軍に送って対岸にも疫病を流行らせたり、失敗したり疑いを生じた武将をあっさり処刑する曹操は非情の人と描かれますが、疫病で伏せる武将を自ら訪れ呉を攻め落として生きて故郷に帰ろうと説いて全軍を鼓舞し気持ちを一つにする様は見事です。単身訪れた小喬に対する姿勢も、むしろ誠実とも言え、小喬の方がずるいとさえ感じさせます。
尚香と友情を育てる曹操軍の1000人隊長孫叔材に至っては人がよ過ぎ。これほど無邪気にスパイ行為を働く尚香を自分の友だちとかばう姿を見せられると、どこか曹操軍に同情したくなってしまいます。
最後の決戦は、白兵戦で、人が死ぬシーンが、これでもかというばかりに続き、辟易します。
連合軍内の、そして孫叔材と尚香の、友情がメインのストーリーとなっていますが、見終わった感じでは、どうも「一将成って万骨枯る」の印象が強く残りました。誰も勝者はいないと言っていますが。
もちろん、赤壁の戦いの映画ですから、決着は付けざるを得ないのですが、映画としては決戦前の部分の方が見どころのように思えます。
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