庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

女の子が楽しく読める読書ガイド
花の魔法、白のドラゴン(原題:The Merlin Conspiracy) 
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作 2003年 (日本語版は2004年、徳間書店)
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの新作(2005年3月に「大魔法使いクレストマンシー」シリーズの新作 “Conrad's Fate”:日本語版未刊が出るまでは最新作でした)。
 1ページが46字19行の組みで本文530頁超の長編。その上、話が、7割方進むまでずっと異世界にいる2人の主人公のエピソードが交互に進行するので、子どもが読むには結構つらいものがあります。
 ストーリーは、魔法の世界であり多元世界の中心の「ブレスト」(イギリスに似ている)に住む王室付き魔法使いの娘ロディ(13歳くらい)と地球のイギリスに住んでいるが異世界をさまようハメになった14歳の少年ニックが、様々な魔法による異変・事件に巻き込まれながら、陰謀に打ち勝つというお話。
 パラレルワールド(多元世界、並行宇宙)を舞台に、魔法が絡み、荒唐無稽ですが、これだけ自由奔放というか大胆に展開すると、それはそれで心地よいものです(好みは別れるでしょうね)。
 主人公は、ロディとニックですが、他にもかなりの重要人物が交錯し、かなり混沌とした感じです。特に力のある魔法使いが、マクスウェル・ハイド(ハイドおじいちゃま)、グィン・アプ・ニース(グィンおじいさま)、ロマノフと中高年男性が多いので、読んでいる感じとして女の子が主人公のファンタジーという印象は薄いです。
 ロディは、ニックの評価では「のびのび育った木という雰囲気」「実際、だれにどう思われようと、気にしない子だった」(425頁〜426頁)。力のある魔女から魔法の知識を授けられ、最後にはかなりの魔法を使えるようになり、陰謀を打ち砕くことになるのですが、独力で冒険をして問題を解決していく力強さはあまり感じられません。
 ロディに限らず、登場人物のほとんどが多面的な性格を持ち、その位置づけも話の中で変化し、なかなか単純には評価できません。その分ファンタジーとしても深みはあるといえるわけですが。
 しかし、多数の登場人物が、その力量・性格とも性別を超えて様々に描かれていて、全体としては性的なパターン化はあまり感じられません。
 読後感は割りといいんですが、ロディ(女の子の主人公)の存在感と積極性が今ひとつ印象薄いので、ちょっと評価に迷いを感じます。「少しお薦め」にしておきますが、「わりとお薦め」かも知れません。

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