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シャバヌ ハベリの窓辺にて (原題 HAVELI)
スザンネ・ステープルズ作 1993年
「シャバヌ 砂漠の風の娘」の続編 「シャバヌ 砂漠の風の娘」はこちら
「砂漠の風の娘」で最後に逃走をあきらめ、地主・州議会議員のラヒームの第4夫人となり6年がたち18歳になったシャバヌの物語。
ラヒームとの間に娘ムムタズが生まれ、ラヒームの寵愛を受けつつ、他の夫人やその娘、その意を受けた使用人らから迫害され、娘を守って生きることに精力を注ぐシャバヌ。男社会の問題点、貧しい使用人への慈愛の目も描かれているんですが、前半は、屋敷の中での抗争と陰謀に重点が置かれ、「女の敵は女」という構図と金持ちの視点に、私はちょっとなじめませんでした。
シャルマおばさんの忠告を守り心の奥を見せないことや、密かに避妊をして息子を生まないことも、したたかな生き様ではありますが、夫の寵愛を維持することや屋敷内での(他の夫人との)抗争に向けた知恵で、シャバヌの自由や主体的な生き方への志向をストレートには出せていない感じ。シャバヌの自由への志向は、あくまでも年老いた夫が死んだ後には屋敷を向け出して娘と2人で暮らしたいというもの。
中盤から、仲良しのザボが政略結婚させられることになり、ザボを逃走させる計画を立て、これが物語の中心となります。ザボを励まし、計画を立て準備をするシャバヌの姿は、強さとしたたかさを感じさせます。そして、シャバヌは夫の第1夫人の娘の婚約者オマールと出会い、恋に落ちます。
「砂漠の風の娘」と同様、イスラム社会の掟に背き、くびきを断ちきって逃走を計画するのですが・・・
しかし、ザボの結婚はザボの父親ナジルの陰謀で形だけ実施され、ザボの新郎もその父であるシャバヌの夫も殺されてしまいます。その過程でシャバヌはナジルに捕らえられて結婚を迫られます。そしてナジルの元からザボとともに逃走しますが、途中でザボも殺されてしまいます。
シャバヌは、自分をあきらめないナジルが親族に累を及ぼすのを避けるために、死んだことにして隠れて生きて行くことになります。その結果、オマールとの恋も果たせぬまま(プラトニックのまま)あきらめます。
どんな状態になってもあきらめずしたたかに生きぬくシャバヌの姿はいいと思います。最後の段階で語られるように、「どんなことが起きても人々の生活は続いていくんだわ」「生きている限り、希望はあるのね」というメッセージは、ある意味で力強いです。けれど、それは絶望の中の希望。そこまで自分を抑えて生きねばならないのかという重苦しさの方が先に立ってしまいます。
シャバヌはしたたかに生きぬくけれど、社会(男の暴力)の方は変えられない、そのあたりをどう評価するかですね。
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