国や地方自治体(都道府県とか市町村、東京23区)などが、行政に認められている権限に基づいてしたことについて、その効力を争ったり、行政に対して一定のことをやめさせたり逆にやるように求めたりする裁判です。
実際には行政が行った処分(しょぶん)、例えば労災(ろうさい:労働者が業務中や通勤中にけがをしたり、業務が原因で病気になった場合の治療費や休業補償等)の不支給処分や傷病手当金(しょうびょうてあてきん:けがや病気で働けなくなって休職しているときに健康保険から賃金の代わりに支給される手当)の不支給処分とか運転免許の取り消しとか税金についての税務署の処分を争う裁判が多いです。原子力発電所の設置許可処分の取り消しや公務員の懲戒処分の取り消しを求める裁判も行政裁判です。
法律家の業界では、行政訴訟(ぎょうせいそしょう)という言葉を使うことが多いです。
行政の安定を図るためという理屈で、裁判に様々な制限があります。
まず、多くの場合、いきなり裁判を起こすことはできません。多くの場合、まず行政に対して不服審査の申し立てをしなければなりません(行政不服審査について、詳しくは「行政不服審査」を見てください)。しかも、たいていは処分の通知から3か月以内にしなければその後は申立ができません。それにもかかわらずそれは様々な法律にバラバラに規定されていて非常にわかりにくくなっています。 詳しくは「行政法規のジャングル」を見てください
裁判も取消訴訟は行政不服審査の結果が出るなどしてから6か月以内に起こさなければなりません。これは従来は3か月でしたが2005年4月から6か月に変更されました。
裁判を起こすことができる人も限定されています(業界用語で「原告適格」:げんこくてきかくの問題)。裁判を起こすことができる人の範囲については、空港の飛行差し止めを求める裁判と原発裁判によって次第に広げられてきました。
元になった処分が期間付のような場合、裁判中にその期間が過ぎると裁判ができなくなることがあります(業界用語で「訴えの利益」の問題)。
このようなことから、行政裁判では、訴えた人が判断を求めている内容そのものを判断せずに、裁判ができないといって門前払いされる場合が少なくありません。
◆新型インフルエンザ等対策特別措置法によるパチンコ店の休業指示を例に行政訴訟の特殊性を説明してみました。
→ パチンコ店休業指示と行政訴訟
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