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活動報告:原発裁判
浜岡原発2号機に入りました(その2)
 2005年9月1日、浜岡原発の運転差し止めの裁判の検証が行われました。この裁判は、浜岡原発の1号機から4号機までについて東海地震が起こるまでの間運転を差し止めることを求めるものです。防災の日、つまり関東大震災の日に、検証が行われたのは偶然とはいえ意義深いことでした。
 検証本番では、2005年7月13日に行われた下見で指摘した中部電力の工事や管理のずさんさがさらに目につきました。
 原発で様々な機器や安全装置を動かす信号を伝えるケーブルは、火災での延焼防止のために「延焼防止剤」を吹き付けています。かつてアメリカのブラウンズ・フェリー原発1号機で起こった火災でケーブルが延焼したことの反省からそうしているのです。今回の検証で、下見ルートからは外されたケーブル処理室を初めて見ました。ケーブルには延焼防止剤が吹き付けてはあるのですが、その吹き付けにはかなりムラがあり全然延焼防止剤がついていないケーブルもいくつも見られました。
 浜岡原発は沸騰水型原発というタイプです。日本の原発の過半数がこのタイプです。沸騰水型原発では再循環系配管という大口径の配管の破断が最大想定事故となっています。この再循環系配管では、最近、グラインダー加工等の表面加工部分が、応力腐食割れというステンレスでも防げないタイプの割れの起点となっている例が多数発見されています。
 浜岡原発2号機では溶接部以外でも非常に広範囲にグラインダーで削った跡がありました。下見でそれを指摘したところ、その後中部電力から、それは溶接の時に飛び散った金属粒をきれいに取るために磨いたものだという回答がありました。しかし、溶接部から遠く離れたところでもグラインダーがかけられていたり、直線の配管部分を1本分ぐるりと全周にわたってグラインダーをかけていたりして、とても中部電力のいうような理由でグラインダーをかけたとは思えません。どちらにしても、現場でかなり安易にグラインダーで削っていると評価できます。
 原発で異常が起こったときには原子炉に制御棒を一斉に挿入して緊急停止をします。その制御棒は水圧で押し込むのですが、その押し込む水を送る配管にバルブがつけられています。このバルブを間違って閉めてしまったら、緊急停止信号が出てもその制御棒は挿入されません。バルブを間違って閉めても、そのことは自動的にわかるシステムはありませんから、その制御棒を挿入しようとしない限りずっとわかりません。このことは下見の時にも指摘しました。
 今回もう一度そこをよく見てきました。そのバルブはチェーンもかけられておらず、鍵もなく、手動で簡単に閉めてしまうことができます。ただ、「操作・禁止」という札をかけて注意を促しているだけです。制御棒を押し込む配管は制御棒の数だけありますから、たくさん並んでいます。中部電力が検証の時に説明した列では、バルブにきちんと「操作・禁止」の札がかけてあるのですが、他の列をのぞいてみると、半分くらいの制御棒では配管の手動バルブに札がかけてありませんでした。一部のバルブには「操作・禁止」の札がかけてあって一部のバルブにはかけてなかったら、経験不足の作業者は札のかけてないバルブは閉めてもかまわないと錯覚しかねません。原発では放射線被曝の関係で腕のいい職人が集まりにくく、熟練する頃には被曝線量が制限を超えてしまって作業できなくなったりしますので、経験不足の作業者が作業することがありがちです。こういう表示は誤操作につながりかねないものです。

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