庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆刑事事件の話
  それで、結論は? (ジャン=バルジャンのケース:刑事弁護の必要性)

みなさんはジャン=バルジャンに対してどうするのがよいと考えますか。

 検察官の意見を読んだ後は、たぶん、相当重い処罰が必要だと感じたのではないでしょうか。弁護人の意見と合わせて読むことで、最初には気づかなかったことも見えてきたのではないでしょうか。もし弁護人がいなかったら、みなさんはジャン=バルジャンに今考えているのと同じ判断をできたでしょうか。
 私は、別に検察官の意見が間違っていると言うつもりはありません。検察官の意見も弁護人の意見も1つの真実なのです。その両方を見た上で判断することで、より真実に迫った深みのある判断ができるということを言いたいのです。

 ところでジャン=バルジャンはどうなるのか気になるかも知れませんね。「ああ無情」ではジャン=バルジャンは少しも自己弁護をせず、検察官が巧妙な弁論でジャン=バルジャンが盗賊団の一員だったとしたことから死刑の判決を受けましたが、上訴せず、その後恩赦で減刑されて無期懲役とされました(弁護人の活動についてはまったく触れられていません)。
 今の日本ならどうでしょうか。このケースと同じく犯罪後7年たってからの判決ならば、執行猶予(すぐに刑務所には入れず、一定の期間犯罪を犯さなければ刑が取り消され刑務所に入らなくて済む制度)が可能ですし、おそらく執行猶予になるでしょう。起訴される前に弁護士が付いていれば検察官と交渉して起訴猶予(起訴しないこと)にできるかも知れません。しかし、もしジャン=バルジャンが犯罪を犯してすぐに捕まっていれば、刑務所を出てすぐのことですので法律上執行猶予は不可能です。裁判所は同じ種類の罪を再度犯した時は前の事件の判決より重くすることが多いので、弁護活動がよほどうまくいかないと5年を超える懲役になる可能性もあります。

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