◆子どもにもわかる裁判の話◆
裁判官にもわからないときはどうするの?
本当にわからないときは・・・
裁判(さいばん)というのは、裁判官がいないところで起こったできごとについて、そのできごとに関係のある人が、本当はこうなんだといって証拠(しょうこ)を出して、それを見て裁判官が判断するしくみだ。でも、問題のできごとに関係ある人がいつも本当のことをいうとは限らないし、いつもきちんとした証拠があるとは限らない。「裁判(さいばん)というものがあるわけ」で例にあげたウィーズリーくんとロングボトムくんのような場合、約束の中身を契約書(けいやくしょ)にしているということは、まあ、ふつうないよね。
そうすると、裁判でいろいろと双方の言い分も聞いたし証拠も出してもらったけど、結局、本当はどうだったのかわからないということだって、ありえるわけ。そういうとき、友達の間のことだったら、どっちの言うことが正しいと思うと聞かれても、「わかんない」でもいいし、証拠がなくても親しい方の味方になるかも知れないね。でも、裁判だとそういうわけにはいかない。本当はどうだかわからないときでも、結論を出さなきゃならない。さあ、どうする?10円玉を投げて表なら原告の勝ち!原告と被告にじゃんけんしてもらう・・・。だめだよ、それじゃあ。
実は、裁判官がわからないときのために、裁判の場合、ことがらによって、片方がそのことがあったことを証拠で示す(こういうことを「立証(りっしょう)する」というよ)べきだということが決められているんだ。このことを法律家(ほうりつか)の業界(ぎょうかい)では「立証責任(りっしょうせきにん)」と呼んでいる。それで、そのことについて裁判官が結局わからなかったら、証拠を出すべきだということになっている側(「立証責任」がある側)が負けることになっている。
例えば、ウィーズリーくんがロングボトムくんに約束通りに魔女アグリッパカードをくれるように請求するときには、ウィーズリーくんがその約束があったことを立証しなければならないと決まっているとしよう。そのときに裁判官がそういう約束があったかどうかわからないということになったら、ウィーズリーくんが裁判に負ける(魔女アグリッパカードをもらえない)ということになるわけだ。
どちらが立証すべきかということはきちんと決まっているの?
刑事裁判の場合は、訴えられた被告人が罪を犯したということは検察官(けんさつかん)が立証しなければならないとはっきりと決められている(そのことについては「有罪と無罪の境界線」を見てね)。
しかし、民事裁判では、法律でははっきりと決められていない。法律の言葉の書き方とか、問題になっていることがらがどっちであることがふつうなのかということとか、そのことについての証拠はふつうどちらが持っているかとか、いろいろなことを考えてどちらに立証させるべきかを判断しているのが実際のところ。よくあるタイプの事件だと、だいたい裁判官の考え方も決まっているけど、めずらしい事件とか重大な事件になると、どちらが立証すべきかということ自体が大きな問題になったりするんだ。弁護士同士でお互いに相手の方が立証すべきだと言いあうこともあるし、裁判官も負けさせたい方に立証責任があると決めることもある。
でも、現実には裁判官がわからないということは少ない
実際の裁判では、双方の本人が口でいうこと以外には証拠がないということもよくある。その言い分が正反対ということもよくあること。でも、裁判官は、それでも、どちらが本当かわからないと判決に書くことは、ほとんどない。
どちらの話が普通に考えてありそうなことか、問題になっていること自体には他に証拠がなくてもそれ以外のことについて他に証拠があるときはどちらの話がその証拠にあっているかとか、そういうことで判断することが多い。
そうすると、できるだけ証拠書類を作って残しておくことが、裁判では有利になるわけ。証拠になるものは捨てないようにしないとね。
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