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   ◆民事裁判の話(民事訴訟の話)庶民の弁護士 伊東良徳のサイト モバイル新館

 和 解

ここがポイント
 民事裁判の相当な部分は、判決ではなく和解で終了している
 裁判上の「和解調書」は判決と同様、それで強制執行できる
 和解案が裁判官から積極的に出されるか、双方の和解案を仲介するだけかなど、和解の進め方は裁判官によりさまざま

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  民事裁判はすべて判決が出されるのですか

 民事裁判では、審理の途中に裁判所から、話し合いで解決する「和解(わかい)」を勧められることがよくあります。実際には、民事事件の相当な部分は和解で終了しています。

 和解をする場合には、裁判の手続を進める中で、判決の行方が見えにくい(勝つか負けるか判断がつかない)場合、判決になると通常は100か0かということになりますので、負けるリスクがある(大きい)ときには、ほどほどのところで和解をすることでダメージ(リスク)を減らすということを考えて和解をするというパターンがあります。
 判決で勝てると判断できる場合でも、裁判所の判断をもらう(白黒を付ける)こと自体が目的でなく、判決で実現するべき内容を実現することが最優先の場合(民事裁判制度は、どちらかというとそういうケースを予定していますけど)、判決を取るにはまだ相当時間がかかるということを考えて、同じことなら和解で決着しようということもわりとあります。私は、近年は、訴状からしっかりと主張を組み立てて、早い時期に勝勢を確保して、有利な(実質勝訴の内容の)和解をしようと考えるケースが多くなっています。
 判決が見えている場合、通常は双方の弁護士がそれは判断できますので(そうでない人も時々いて困りますが)、予想される判決内容に近いところで双方が希望する条件を調整(判決が見えている場合、予想される判決と大幅に違う内容での和解は無理ですので、基本的には「微調整」)して和解内容を決めることになります。
 また、勝訴判決が予想される場合でも、判決では付けられない条件を付けたいということを考えて和解するというパターンもあります。判決で裁判所が命じられる内容は割と狭い(選択肢は少ない)ので、和解によって、判決では得られない内容を取ることも、現実的にはめったにないですが、ときにはあります(例えば「勝訴判決以上の和解」を見てください)。

 私がもっとも得意としている解雇事件で、現実には一番多い金銭解決の和解をするときを例に、和解条項の内容について説明していますので、民事裁判での和解のイメージをつかむためにも、「解雇事件の合意退職和解(金銭解決)」を見てください。

  和解の手続

 和解は、裁判所が原告、被告の意見を聞き、裁判所も和解案を出したりして調整をし、原告側と被告側が合意すれば成立します。
 和解の話は、ほとんどの場合、法廷ではなく裁判官室のそばの部屋で行われるか、Web会議で行われます。
 法廷外の部屋で行われる場合、その部屋には普通の会議用テーブルか応接セットがおいてあり、裁判官も法廷で着ている黒い法服は着ずに現れます。和解のときは、裁判官が原告側だけを入れて原告側の話を聞いて、次は被告側だけを入れて被告側の話を聞くというようにすることが多いです。相手方がいない席で、どういう条件なら妥協できるか本音を聞くためです。
 Web会議で行われる場合(当事者の一方は裁判所の小部屋で裁判官と同席し、もう一方は事務所からWeb会議ということも可能ですし、双方ともWeb会議も可能です)、片方の通信を切断して一方の話を聞き、次いで反対側とつないで話を聞く、その後双方と話をするなどします。
 和解を成立させるために、以前は少なくとも片方の当事者(の弁護士)が裁判所にいる必要があったのですが、2023年3月1日以降は、双方がWeb会議でも和解を成立させることができるようになっています。
 裁判官は、双方に相手方の答を伝えてどこまで妥協できるか聞いて間をつめていく場合もありますし、裁判所の意見として和解案を出したり、このまま判決になったらこうなりますよと言って強力に説得することもあります。どういう進め方をするかは、裁判官の考え方や事件の事情によって異なります。
 裁判官は、伝統的には、事件についての心証(要するにどういう判決を書くか)を明かさない傾向が強いのですが、最近は和解の席では心証を示すことが増えています。弁護士にとっては、和解の席は裁判官の考えを聞き判決を予想する機会にもなります。
 和解が成立すると和解調書(わかいちょうしょ)が作成され、判決の場合と同様にその内容について相手方が守らないときには強制執行をすることができます。
 和解の話があっても当事者が合意せず、和解が決裂したときは、通常の裁判手続に戻って審理が進められます。

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