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  ◆債務整理の話

 和解すると利息が付かないわけ

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 弁護士に依頼して貸金業者に分割払いで支払うときは、和解時点以降の利息は付かないことが多い
 その扱いには法律上の根拠はなく、弁護士会と借り主側の弁護士の努力の結果
 貸金業者やその担当者によって、それを拒否する場合があり、その場合の対応は弁護士のポリシーにもよりさまざま
    

  東京三弁護士会統一基準

 東京にある3つの弁護士会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)は、クレジット・サラ金処理の統一基準を設けています。少なくとも弁護士会の法律相談センターで相談を担当する弁護士はこの基準を守ることになっています。
 この統一基準は、貸金業者に対して最初の取引からの全取引経過の開示を求めること、利息制限法に引き直し債権額を確定することの他に、「和解案の提示にあたっては、それまでの遅延損害金、並びに将来の利息は付けないこと」としています。その理由として統一基準は「債務者は、すでに今までの支払が不可能となり、弁護士に任意整理を依頼してきたものであり、担当弁護士としては、債務者の生活を点検し、無駄な出費を切り詰めさせて原資を確保し、和解案を提示するものであり、この和解金に、従来・将来の利息・損害金を加算することは弁済計画そのものを困難にさせます。」としています。
 この基準に従えば、和解案の金額は最終の取引(最後の借入か最後の支払)時点までの取引を利息制限法に引き直した残元本で、その時から和解までの間に発生する利息や遅延損害金(経過利息といいます)も、和解後の分割払いについて将来発生する利息も認めない(支払わない)ことになります。

  貸金業者の態度

 貸金業者の態度は、業者と時期により揺れがあります。東京三会統一基準ができたころには、しょっちゅう弁護士と業者の間で言い合いになっていましたが、今では多くの業者がこの条件で和解しています。
 それでも中小の業者にはこれを拒否するものもありますし、大手の業者でも時々担当者の交替やトップの気まぐれで東京三会統一基準に従わないと言い出すことがあります。また、とりあえず従わないと言ってみて、相手が東京三会統一基準を徹底する弁護士かどうか見ているときもあります。

  どうしてそれで和解できるのか

 利息制限法に引き直して借金の額を減らすことは、法律上の根拠があることで、裁判になったら消費者側の弁護士の主張が通ります。
 しかし、経過利息・将来利息をつけないことには、法律上の根拠はありません。東京三会統一基準も言っているように、そうしないと実際上支払が困難であることが実質的な理由です。
 経過利息・将来利息については、和解が決裂して裁判を起こされ、判決となったら、どちらもついてしまいます。裁判所での和解の場合は、和解後の利息は付けないのが普通ですが、経過利息は付けることが多いです。
 こういうと貸金業者としては裁判を起こせばとれるのになぜ和解するのかと不思議に思うかも知れません。しかし、裁判をするとなるとお金がかかりますし、強制執行となるとさらにお金もかかる上相手の財産があるかどうかもわかりません。貸金業者にとってもわずかな違いのために裁判をするよりも早く和解して弁護士経由できちんと払ってもらった方が、結局は得になる面が多いのです。
 そういうことから東京三会統一基準に理解を示す業者が増えてきて、実務上多くの場面で通用しているのです。

  どうしても従わない貸金業者への対応

 もっとも、過払い金請求が多くなって貸金業者の経営が苦しくなったなどの事情もあり、将来利息をつけなければ和解しないとごね続ける貸金業者もあり、近年はそれが増えてきています。
 そのような場合、以前は、それでは和解できないですねということで放置しておく(消費者側・借り主側の弁護士の間では「塩漬け」と呼び習わしていました)と、貸金業者側が音を上げたり社内情勢や担当者の交代に伴い、貸金業者側から折れてきて将来利息なしで和解がまとまるのが通例でした。
 しかし、強硬な態度を続ける貸金業者もあり、また依頼者が長期間和解がまとまらないことを嫌うこともあります。そういう場合は、特定調停を申し立てて裁判所に説得してもらう(その場合、東京簡裁の例で聞く限りでは、和解成立までの経過利息は支払うことになりますが、和解成立後の将来利息はつけないのが通例です)か、自己破産や個人再生手続の利用を検討することになります。

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