◆短くわかる民事裁判◆
調書判決
被告が、訴状の請求の原因について争わず、反論となる主張(裁判業界では「抗弁(こうべん)」と呼ばれるもの)を主張しない場合や、被告の所在が不明で訴状を公示送達して被告の期日への出席も答弁書の提出もない場合に、裁判所が原告の請求をすべて認める場合は、判決書を作成せずに、判決期日の口頭弁論調書に判決の内容を記載してそれを送達するという扱いをすることができます(民事訴訟法第254条)。裁判業界ではこのような判決を「調書判決(ちょうしょはんけつ)」と呼んでいます。
調書判決によることができるのは、公示送達の場合以外では、「被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合」です(民事訴訟法第254条第1項第1号)。
これは、訴状が適法に送達されたけれども被告が答弁書を提出せずに第1回口頭弁論を欠席した場合に原告主張の事実を自白した(認めた)とみなされる(民事訴訟法第159条第1項本文、第3項本文)ことによるいわゆる「欠席判決(けっせきはんけつ)」の場合が主な場合ですが、答弁書を提出していても、その答弁書で訴状の請求原因をすべて認め(否認するとか争うという記載がなく)、被告の主張(反論)がないために、全体として争っていないと判断された場合や、被告が第1回口頭弁論期日に出席しても訴状の請求原因事実をすべて認めるか、明確に「認める」といわなくてもはっきりと争うといわず被告の主張(反論)をしないために全体として争っていないと判断された場合も含まれます。
公示送達の場合は、被告が答弁書を提出せずに口頭弁論期日に欠席した場合(公示送達の場合、被告が訴状に気づくことはほぼあり得ないのでそれがふつうですが、被告が公示送達に気づいて答弁書を提出した場合は除かれます。2025年から実施されるという公示送達のWeb掲載が実施されるとこういう例も出てくるかも知れません)、原告が書証を提出し、必要に応じて原告本人尋問を簡単に行った上で判決になり、調書判決となるのがふつうです。
調書判決の場合、口頭弁論調書に、当事者及び法定代理人、主文(「別紙請求の趣旨記載のとおり」として訴状の写しが添付されるのがふつうです)、請求(「別紙請求の趣旨及び請求の原因記載のとおり」として訴状の写し(切り貼り)が添付されるのがふつうです)、理由の要旨(「被告は、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって、被告において請求原因事実を争うことを明らかにしないものとしてこれを自白したものとみなす。」くらいの記載)をします。
裁判所Webで調書判決が掲載されているのを見つけました。データのため、口頭弁論期日調書の書式が用いられていないので、ふだん目にするものとは見た目が違いますが、こちら)
調書判決がなされた場合、(判決正本ではなく)その判決言渡期日の口頭弁論調書の謄本が送達されます(民事訴訟法第255条第2項)。公示送達の場合、その調書謄本の送達もまた公示送達されます。
判決については、モバイル新館の「弁論の終結と判決」でも説明しています。
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