◆短くわかる民事裁判◆
公示送達
被告の住所地に訴状を郵送したが送達できなかったとき、被告が訴状記載の住所に住んでいないという判断の場合は、現実的には被告の住民票を取り、住民票が移転していれば訴状の被告の住所を移転先に訂正してそちらに送達することになります。
被告が住民票所在地に住んでいない(住民票がそのままか、移転していても移転先にやはり訴状が届かない)ときは、それ以外の方法で被告の本当の住所がわかれば、やはり訴状の被告住所を訂正しますが、結局、被告の住所がわからないということになると、公示送達の手続をとるかどうかということになります。
公示送達を求めるどうかは原告側の判断で、公示送達で判決を取ることに意味がないという判断で訴えを取り下げるということもあり得ます。相手の所在もわからないのでは判決を取ってもその通りに実行されることはまず期待できません(そもそも相手は判決があったことも知らないことになります)し、相手の所在がわからないケースのほとんどは相手の財産も把握できず強制執行もできないということですから。
公示送達を求めるということになると、やはり原告側で調査をして、被告が住民票の住所地に住んでいないことの調査報告書を提出して、公示送達をするよう上申します(これについては「居住調査」で説明しています)。ここでも、被告が住民票の住所地に住んでおらず住所不明であるかは、書記官が判断します。
公示送達は、送るべき書類(訴状等)を書記官が保管して、出てくればいつでも渡すということを書いた紙を裁判所の掲示板に吊し、2週間経ったところで書類が送達されたという扱いになります(民事訴訟法第111条、第112条第1項本文)。2回目以降は即日送達されたということになります(民事訴訟法第112条第1項但し書き。たいていの場合、訴状等が1回目、2回目は判決)。(民事訴訟法の2022年改正により、2025年から公示送達はWeb掲載で行うことになりました:施行日未定)
訴状等を公示送達にした場合、被告が訴状が送られていることも知らないことが明らかですから、被告が来ないということで欠席判決をすることはできず、原告側で主張を立証する必要があります。ただ、そうは言っても、被告側の反論は全くないわけですので、公示送達の事件ではほとんどの場合、訴状につけられた証拠書類とせいぜい原告本人の尋問くらいで1回で終結して判決に至り、原告の主張通りの判決になるのが実情です。
公示送達の場合、付郵便送達の場合とは違って、後から無効とされる可能性は低いですが、原告が実は被告の所在を知っていたにもかかわらず、あるいは少し調査すれば知ることができたのに調査を怠って、住所が知れないという報告書を提出して公示送達が行われた場合には、被告から損害賠償請求を受けるリスクがありますし、被告の再審請求が認められる可能性もなくはないです。
訴状の送達については「裁判所の呼出を無視すると」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴状が届かないとき」でも説明しています。
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