◆短くわかる民事裁判◆
居住調査
訴状等の送達をしたが、保管期間満了や宛所に尋ねあたらずで裁判所に戻ってきた際、改めて被告の住民票を取得しても住民票の住所が動いておらず訴状記載の住所のままで、被告の就業場所が不明である場合(そこまでについては「訴状が届かないとき:裁判所に戻ったとき」で説明しています)、被告が訴状記載の住所に居住しているときは、ただの受取拒否として郵便に付する送達(付郵便送達)、被告が訴状記載の住所に居住していないときは、住所が知れないので公示送達へと進むことになります。
そのためには、訴状記載の被告の住所(住民票上の住所)に行って、被告が居住しているかどうかを調査して判断し、裁判所に提出する報告書を作成することになります。
具体的にどのように調査するか、どの程度調査するかは、弁護士の経験と、何よりもその事件の担当書記官がどの程度で納得するかにかかっています。
まず外観で、表札その他氏名表示があるか、郵便受けの氏名表示があるか、郵便受けに郵便やチラシ等が溜まっているか(あくまでも外観から)、新聞が溜まっているか、電気やガスのメーターは見えるところにあるか、ある場合メーターが動いているかなどを確認します。
部屋の前まで行けるときは(オートロックのマンション等では無理ですが)電灯が点いているか、物音がするか、部屋の前に何が置かれているか(自転車とか子どものおもちゃとか植木鉢とか)、その状態(ほこりを被っているのか、最近も触った様子かなど)などを確認します。
ベランダや庭側から見ることができるときは、洗濯物の有無・状態、ベランダや庭にあるものを確認します。
もちろん、ペットなどのいる様子がわかればそれも確認します。
そして、インターフォンその他で呼びかけて反応を確認し、もし誰かが出てくれば被告本人かを確認し、同居人であれば被告は今どうしているかを聞き、現在の居住者だが被告ではないと言われたらいつから居住しているか、前の住人の名前や転居先はわかるかを確認します。
近隣の住人にもインターフォンで呼びかけて、目的の住居の住人について、名前や最近見かけるかなどを聞いてみます。
そして集合住宅で管理人がいれば、管理人に目的の部屋の住人について、名前や現在の動向等を確認します。
1回の調査で確信が得られないときは、もう1度行って変化があるかを確認することも(書記官からそれを求められることも)あります。
そういった情報から、被告が居住していると判断できるときは、居住しているという根拠となる情報を取りまとめて報告書を作成します。→「付郵便送達」
被告が居住していないと判断できるときは、居住していないと判断する根拠となる情報を取りまとめて報告書を作成します。→「公示送達」
東京簡裁が公表している調査報告書の書式はこちら
今どきは、何ごとにつけ、それで商売をしている人がいて、こういった居住調査を有料で請け負っている業者もあり、ネットで広告したり、弁護士向けにはFAXなどで売り込んできたりしています。私は自分でやれることを知らない業者に委託することはしていませんが、自分でやるのが面倒ならそういう業者を使うという選択もあります。
訴状の送達については「裁判所の呼出を無視すると」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴状が届かないとき」でも説明しています。
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