◆短くわかる民事裁判◆
訴状が届かないとき:裁判所に戻ったとき
訴状副本や期日呼出状、判決正本等を被告の住所に特別送達をして、保管期間満了や宛所に尋ねあたらずで裁判所に戻ってきた場合、裁判所書記官から、原告(代理人がついていれば原告代理人)に連絡があり、訴状が戻ってきたがどうするかと聞かれます。書記官の方で、保管期間満了の場合は、念のためにもう一度送達をしてみようかと思うとか、夜間休日送達を提案する場合もありますし、原告側で対応を考えるようにいわれることもあります。昔と違って、不在連絡票と再配達依頼が整備された現在、それでも1週間受け取らないケースで、夜間休日配達をしても無駄という考えが強くなってきていますので、その選択肢が採られることは稀になっていると思います。
原告代理人としての通常の動きとしては、とりあえず調査してみますと回答し、まず被告の住民票を取得して確認しるというのがふつうの対応となります。尋ねあたらずの場合、転居している可能性が高いですし、保管期間満了の場合でも住民票はそこにあることを確認してから次に行くべきです。たいていの場合、提訴前に被告の住民票まで取りませんし、取っていた場合でもその後に転居している可能性もありますから、改めて取ります。
住民票を取って、転居していれば、訴状訂正申立書(被告住所の訂正)を提出して、その転居先への送達を求める上申書を出して(上申書を出さなくてもいいかもしれません)転居先に再度送達してもらいます。
住民票上転居しておらず、住民票上の住所が訴状記載の住所のままの場合、あるいは転居先への送達がまた戻ってきた場合、被告の就業先がわかるときは、就業場所への送達を上申します。民事訴訟法の規定上は、被告の住所・居所が知れないときまたはその場所において送達するのに支障があるときに初めて就業場所への送達が可能となる(民事訴訟法第103条第2項)のですが、住所に送達をして、今どきは不在連絡票と再配達が整備されていて再配達が容易なのに1週間受け取らないのですから、裁判所に訴状が戻ってきた場合はこの要件は満たしていると考えていいでしょう。就業場所がわかる場合は、就業場所送達では本人が受け取らないとか不在の場合でも就業場所の従業員への交付で送達できます(民事訴訟法第106条第2項)ので、それでも送達できないということはふつうはないでしょう。
問題は、被告の就業先がわからない場合です。
そのときは、郵便に付する送達(付郵便送達)か、公示送達という次のステップを見据えて、住所地の調査に行きます。それについては→「居住調査」をお読みください。
この状況を被告側から見た場合については「訴状の不在連絡票を放置したら」で説明しています。
訴状の送達については「裁判所の呼出を無視すると」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴状が届かないとき」でも説明しています。
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