◆短くわかる民事裁判◆
訴状の不在連絡票を放置したら
郵便配達人が被告の住所に、訴状副本や期日呼出状、判決正本等を配達しに来た際、被告本人が不在でも、被告の使用人その他の従業者または同居者(ただし、趣旨を理解できないような者:実務的には10歳程度未満の子どもを除く)がいれば、その人に手渡して送達報告書に署名または押印をさせて、送達が完成します(民事訴訟法第106条第1項)。
そういう人もみな不在の場合は、不在連絡票が残されます。その不在連絡票は、書留郵便やレターパックプラスの場合と同じ用紙で、同じように再配達依頼や郵便局窓口で受取ができます(そのあたりは「特別送達」で説明しています)。ごくふつうに見る不在連絡票ではありますが、差出人が裁判所であること、郵便物の種類が「特別送達」にチェックされていることで裁判所からの郵便であることがわかります。
それを再配達依頼せず、郵便局の窓口にも取りに行かなかったらどうなるでしょうか。結論からいえば、最終的に訴状を受け取る場合についていえば、受け取って中身を見ない限り訴訟対応の準備ができないのですから、訴状の受取を遅らせることは訴訟の準備期間を短くするだけです。放置し続けて最終的に受け取らない場合は、訴状の中身も見ないままで敗訴判決を受けるおそれがあります(実務的にいえば、その可能性が高いです)。いずれにしても弁護士の目からは、ただただ愚かしいことです。
不在連絡票が置かれた場合の保管期間は基本的に1週間ですので、再配達依頼もせず、郵便局にも取りに行かなければ、(一応再度配達を試みるということですが、そのときも不在なら)訴状等は、保管期間満了という送達報告書とともに裁判所に戻されます。
その後は裁判所と原告の間で「訴状が届かないとき:裁判所に戻ったとき」、「居住調査」、「付郵便送達」で説明しているような経緯をたどって、原告が被告の就業場所を知っているときは就業場所送達を試み、原告が被告の就業場所を知らないときは、被告の住所の居住調査を経て、付郵便送達がなされるというのが通常の流れです(郵便配達人が被告の実際の住居に送達を試みて不在連絡票を置いていった、言い換えれば被告自身が不在連絡票を見ているケースでは、さすがに公示送達になることはないと思います)。そうすると、しばらくするともう一度郵便配達人が配達に来て、もし被告か家族でも在宅していればそこで配達され(ただし、法的には、付郵便送達にされた以上、受け取る前の発送時に送達は完了していることになります)、不在なら再度不在連絡票が置かれます。同時に、書記官から付郵便送達をしたので受け取らなくても発送時点で送達扱いになっていることなどを記載した通知書が普通郵便で送られてきます(民事訴訟規則第44条)。裁判所としては付郵便送達にした時点でもう訴状等は有効に送達された扱いになりますので、ここで被告が受け取ろうが放置しようが関係なくふつうに訴訟が進められます。被告としては、(2度目の)不在連絡票を見て再配達依頼なり窓口受取をすれば訴状等を受け取れますが、そうしないでまた1週間放置すると、訴状等はまた裁判所に戻されます。書記官からの通知書には原告名や事件名、事件番号、裁判所の担当部係、書記官名、電話番号等が記載されていますので、訴状等が裁判所にまたしても戻った後でもそこに連絡して裁判所に行くなどして訴状等を受け取ることはできます。ただいずれにしても裁判期日は開かれ、被告が答弁書を提出しないで第1回口頭弁論期日を欠席すれば被告が原告の言い分をすべて認めたものとして欠席判決がなされる可能性が高く、被告が訴状等を受け取って対応する場合でも、訴状等の受取が遅れた分だけ被告の準備期間が短くなって被告が不利益を受けるということになります。
訴状の送達については「裁判所の呼出を無視すると」でも説明しています。
モバイル新館の 「訴状が届かないとき」でも説明しています。
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