◆短くわかる民事裁判◆
高層ビル建設と原告適格(倒壊・炎上の危険)
千代田生命保険(現在はジブラルタ生命保険に吸収されている)が渋谷区広尾に22階建てのビル(千代田生命広尾ビル:現恵比寿プライムスクエアタワー)を建設するために、東京都知事が1992年7月7日付で行った容積率制限と南側隣地にかかわる斜線制限を緩和する内容の総合設計許可及び北側斜線制限の適用を除外する都市計画許可、東京都建築主事が1993年5月17日付でした建築確認について、直線距離で13.5m~127.5mの範囲に居住している近隣住民とその範囲に建築物を所有している者が取消を求めて提訴しました。
最高裁2002年1月22日第三小法廷判決は、総合設計許可に関する建築基準法の規定は、「当該建築物及びその周辺の建築物における日照、通風、採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに、地震、火災等により当該建築物が倒壊、炎上するなど万一の事態が生じた場合に、その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことがないようにするためであると解される。」「以上のような同項の趣旨・目的、同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え、同法が建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ことにかんがみれば、同法59条の2第1項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」とし、上告人らが居住しまたは所有する建築物はいずれも本件建築物が倒壊すれば直接損傷を受ける蓋然性がある範囲内にあるものということができるとして、上告人ら全員に総合設計許可の取消を求める原告適格を認めました。
この判決は、続いて都市計画許可についてもほぼ同趣旨の判示で上告人らの原告適格を認めました。
ただし、いずれについても許可は適法であり、本来は原判決を破棄して請求を棄却することになるところ、不利益変更禁止のために請求棄却はできないので、上告を棄却するとしています。
また、建築確認については、工事がすべて完了したために訴えの利益が失われたとして、訴えを却下しました。
行政裁判については、「行政裁判の話」でも説明しています。
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