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短くわかる民事裁判◆
上告
 上告は、通常は、第1審判決に対して控訴がなされ、その控訴審判決に対する不服申立て(上訴)で、第1審が簡易裁判所(控訴審が地方裁判所)である場合は高等裁判所が、第1審が地方裁判所(控訴審が高等裁判所)である場合は最高裁判所が、上告裁判所となります(民事訴訟法第311条第1項本文)。

 ただし、いくつかの例外があります。
 第1審判決言渡後当事者双方がともに上告する権利を留保して控訴をしない合意をしたときには、控訴審を飛ばして直ちに上告をすることができます(民事訴訟法第281条第1項但し書き)。これを「飛躍上告(ひやくじょうこく)」と呼んでいます。実際には飛躍上告がなされることは稀です。
 高等裁判所が第1審裁判所とされる場合があり、その場合、上訴は最高裁判所になされることになります(民事訴訟法第311条第1項本文)。法律上控訴ができず最高裁に上告することができるとされている場合もあります。最高裁判所が裁判権を有するのは、訴訟法において特に定める抗告以外は上告のみです(裁判所法第7条)ので、最高裁に対する上訴は、1度目の上訴であってもすべて「上告」となります。
 高等裁判所が第1審となるケースや地方裁判所が第1審だが控訴ができないとされているケースは、公職選挙法や地方自治法、特許法、海難審判法などの特別法で定めるものがいくつかありますが、その大半は行政事件です。民事訴訟での例としては人身保護請求があり、人身保護請求は、被拘束者、拘束者または請求者の所在地を管轄する高等裁判所または地方裁判所に提起することができ(人身保護法第4条)、その判決に対する上訴はすべて最高裁判所に対してすることとされています(人身保護法第21条)。

 以上のような場合と別に、判例上上告が認められたものとして、控訴審判決言渡後判決正本送達前に当事者が死亡して訴訟手続が中断し後日新当事者(承継人)に対して受継決定がなされたという場合に、受継決定に不服がある新当事者が受継決定のみの破棄を求めて上告することができるとされた例があります(最高裁1973年3月23日第二小法廷判決「判決後の受継決定に対する不服申立て」で説明しています)。

 上告については「まだ最高裁がある?(民事編)」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「最高裁への上告(民事裁判)」もばいる「高裁への上告(民事裁判)」でも説明しています。

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